ドラム缶の中に「黄金のシャンデリア」 量子コンピューターの中身は

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水戸部六美
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 理化学研究所が手がけた国産の超伝導量子コンピューターが完成した。しかし、外から見えるのはドラム缶のような筒や、大きなラック。すごそうだが、一体、中身はどうなっているのか。

 2月、理研のマシンのテスト機がある大阪大学で中身が見学できる貴重な機会があった。

 実験室に入ると、天井近くからシャンデリアのような物体がつり下がっていた。直径50センチほどの黄金に輝く円盤が四つ縦につながり、全長は150センチほどだろうか。テスト機で研究を行う同大の根来(ねごろ)誠准教授が「ドラム缶のように見えるものの中身です」と教えてくれた。

 量子コンピューターは、原子や電子といった「量子」と呼ばれるミクロなものの物理法則をつかった計算機だ。従来のコンピューターは、あらゆる情報を「0」か「1」かで表して計算する。こうした情報単位を「ビット」と呼ぶ。計算機内部ではスイッチの役目をするトランジスタという部品が電気のオフとオンという形で0と1を実現している。パソコンやゲーム機の計算性能を「32ビット」や「64ビット」などと表現することもある。

 一方、量子コンピューターの情報単位「量子ビット」は、0でもあり1でもある「重ね合わせ」という量子特有の状態もとりうる。0か1かだけの世界から解き放たれ、はるかに多くの数の組み合わせを使って大量の計算を一気にできる次世代のマシンだ。

 量子ビットを何でつくるかで量子コンピューターはさまざまな方式に分かれる。超伝導量子コンピューターの場合は、ある種の微小な回路を冷やして超伝導状態にすることで量子ビットを実現している。

 つまり量子ビットが複数のった小さなチップこそが心臓部。0か1かを超越した計算が行われる舞台なのだ。阪大にある16個の量子ビットがのったチップも大きさは1センチ角ほどだ。

 ただし、この量子特有の状態は、とても繊細だ。根来さんは「ほんのわずかな熱や磁場、宇宙線などでも壊れてしまう」と説明する。

シャンデリアに見えたものの正体は

 量子たちに正しく計算をして…

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