中国で上野千鶴子ブーム、20万部超えの本も 自立を望む女性が共感

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真田香菜子 聞き手・田中瞳子
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 中国の女性の間で、日本の女性学・ジェンダー研究をリードしてきた社会学者の上野千鶴子さん(74)がブームだ。著書の中国語訳が相次いで刊行され、共感の声が寄せられている。背景にある中国女性の「いま」を探った。

北京大卒の女性たちとの対話動画 再生18万回超

 「皆さんは結婚式のとき、この人に一生添い遂げると誓ったんですか?」

 2月中旬、中国の動画共有サイト「ビリビリ」に、上野さんが北京大学出身の30代の女性3人とインターネットで対話する動画がアップされた。上野さんに問いかけられた女性は、笑いながら手で×印を作った。動画ではフェミニズムや女性の生き方に関する熱心なやりとりが展開され、18万回以上再生されている。

 いま、中国の女性の間で上野さんの言葉に関心が集まっている。昨年、『〈おんな〉の思想』『在宅ひとり死のススメ』など新たに7点が翻訳刊行され、年末には映画や書籍を評価する最大級のサイト「豆瓣(ドウバン)」によるブックオブザイヤー1位に、作家・鈴木涼美さん(39)との共著『往復書簡 限界から始まる』が選ばれた。

 同書の主な読者層は都市部に住む高学歴の20~30代女性。レビューには「上野先生は、私の頭の中の混乱やあいまいさを鋭く見抜き、一瞬で霧を晴らしてくれました」「涙が出ました」といった声が寄せられた。中国での発行部数は20万部を超える。実は21年にも、漫画家の田房永子さんとの共著『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』が3位にランクイン。高齢化に直面する社会状況のなか、『おひとりさまの最期』は、中国国家図書館主催の「文津賞」を受賞した。

「フェミニズムの裾野広げた」東大入学式の祝辞 

 中国・南京の東南大学副教授で日本民俗学やジェンダー研究に詳しい陸薇薇(ルー・ウェイウェイ)さん(42)によると、上野さんの名前が中国で広く知られたのは2019年春。東京大学の入学式で述べた祝辞が若者に強く支持され、SNSを中心に共感の声が広がった。特に、「がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」というフレーズが注目されたという。

記事の後半では、中国の大学の男女比や婚姻率の推移をみながら、中国の女性たちの間で上野さんのフェミニズムが注目される理由を探ります。『往復書簡 限界から始まる』の共著者・鈴木涼美さんにも話を聞きました。

 陸さんは「若者たちは『がん…

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