東北の被災地は、祈りの季節を迎えている。今年は仏教では一つの節目になる十三回忌。穏やかな春の日が差した5日、各地で法要や追悼行事があった。

 宮城県岩沼市の二野倉集落跡で、東日本大震災時の地域の犠牲者19人の名を刻んだ慰霊碑が十三回忌に合わせて建てられ、5日、僧侶による入魂式があった。集団移転でふるさとを離れた元住民ら約30人が、共同墓地に久々に集まり、仲間たちをしのんだ。

 小林誠さん(50)は、父親の広一さん(当時69)を失った。二野倉の行政区長を務め、地震後も家に残っていた人たちに「逃げろ!逃げろ!」と声をかけて回っていて、津波にのまれたという。「ようやく碑ができてよかった」。名は碑の一番最初に刻まれた。

 小林庄一さん(70)は、隣家の夫婦が亡くなった。「皆、ここに大津波は来るわけねぇと思っていた。逃げていれば助かった命だったんだ」と、くやしそうに振り返った。

 二野倉には約100世帯300人が住んでいたが、家々の多くが流失。内陸の玉浦西地区などに集団移転をした。旧町内会が地縁団体として残り、区切りの十三回忌に碑を建てようと、話し合って決めたという。(石橋英昭

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