トロッコのような小さな客車や貨車を人が後ろから押してレール上を走る「人車(じんしゃ)鉄道」。なんともレトロな交通機関は、明治後期から昭和初期にかけて全国に29路線あったとされ、栃木県は7路線が運行する「人車鉄道王国」だった。
そのうちの一つ、喜連川人車鉄道の一部を再現してまちおこしを進めるプロジェクトが、さくら市(旧・喜連川町)で2年以上前から始まっている。
さくら市の不動産会社社長、浅香充宏さん(63)と有志が2021年、かつてレールがあった場所に近い国道293号沿いの峠「弥五郎坂」の近くに敷地を借りて線路(現在は約35メートル)を敷き、駅舎や車庫も設けた。「弥五郎坂駅」の看板を掲げている。
さくら市ミュージアムによると、喜連川人車鉄道は1902~18年に運行した。基幹路線である東北線の氏家駅から喜連川町までの約8・2キロを結び、旅客やタバコの葉などを運んだ。定員は6人程度で、車夫2人で押した。時速約8キロで走り、片道1時間ほどかかったという。
浅香さんは2020年、市ミュ…