「100%木造」のビル、じわり普及 耐震耐火はクリア コストは?

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高橋豪 初見翔
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 柱や梁(はり)などの構造部分をすべて木で造る「純木造」のビルが広がりを見せている。大手ゼネコンやハウスメーカーが挑戦し、火事や地震にも耐えられるビルが誕生。脱炭素への意識の高まりを背景に、木造建築のニーズが高まっている。課題はコストだ。

 横浜市神奈川県庁に近いオフィス街に、木で造った柱と梁が目を引くビルがある。大林組が自社の研修施設として昨年3月に完成させた「Port Plus」。11階建て(約44メートル)で、純木造の耐火建築物としては日本で最も高い。

 ちなみに、日本最古の木造建築として知られる法隆寺五重塔の高さは32・5メートルだ。

 ビルに足を踏み入れると、木材から出る爽やかな香りがマスク越しでも伝わってきた。セミナールームやラウンジ、宿泊室など、どの空間でも木のぬくもりを感じられる。

 使った木材は1990立方メートルで、6~7割は国産材。二酸化炭素(CO2)の排出量について、同社は鉄筋コンクリート造りの約4分の1、鉄骨造りの半分ほどに抑えたと試算している。

 耐震性を高めるため、柱や梁は、十字形のユニットをつなげて造っている。強度を高めた特殊な木材を使い、3層構造にした。さらに免震も組み合わせた。

 耐火性の基準も満たしている。同社は国内で初めて3時間の耐火性能をもつ木の柱を開発。純木造の15階建て以上の高層ビルでも、建築基準法を満たせるようになった。

 担当者は「純木造でどこまでいけるか、可能性を示せた」と胸を張る。しかし、技術とコストをかけて建てられただけに、現時点で量産は見込めていない。鉄骨造りに比べると、コストは構造部だけでも3~4割高い。耐火基準を満たすのに加工費などがかさむという。

 まず需要の多い5階建ての純木造ビルを普及させることで、建築コストを抑えようとする企業もある。住宅メーカー「AQ Group」(旧アキュラホーム、東京都新宿区)は昨年11月、川崎市に「普及型」のモデルハウスをオープンさせた。店舗やオフィス、住宅などを想定して内装を仕上げた。

 木造注文住宅を手がけてきたことから、サプライチェーン(供給網)が強みだ。5階建てを普及させ、建築費を鉄骨や鉄筋コンクリートの約3分の2に抑えることをめざす。大工出身の宮沢俊哉社長は「今は限られた優秀な技術者しか造れない」と話す。本格的な普及には、技術のマニュアル化が課題だという。

 近年、木造のビルは増えてい…

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