「北方領土を返せ!」3年ぶり全員でシュプレヒコール 北海道で大会

山本智之

 「北方領土の日」の7日、北海道根室市の市総合文化会館で住民大会が開かれた。一般参加者を入れた形での大会開催は3年ぶり。元島民ら約850人が集まり、北方領土問題の早期解決を訴えた。会場では、一般参加者による「北方領土を返せ!」というシュプレヒコールが久しぶりに響き渡った。

 大会は、根室市など1市4町で構成する「北方領土隣接地域振興対策根室管内市町連絡協議会」(北隣協)が主催。コロナ禍で過去2年の大会は一部関係者以外はオンライン参加にとどまっていた。

 ウクライナ問題で日本が対ロ制裁に加わったことから、ロシア側は昨年3月、北方領土問題を含む平和条約交渉を拒否するとの声明を発表。元島民らによる「ビザなし渡航」についても昨年9月、これまでの合意を一方的に破棄した。今年1月には、北方四島周辺水域での日本漁船の安全操業について政府間協議に応じない方針を示し、日ロ関係は厳しい。

 大会で主催者を代表してあいさつした西村穣(ゆたか)・中標津町長(67)は日ロ関係の現状に触れたうえで、「このような時こそ、一人でも多くの人に北方領土問題について知っていただきたい」と述べた。

 国後島出身の元島民で、根室市在住の鈴木昭男さん(82)は「戦後、旧ソ連軍は、平和だった我がふるさとの島々を侵略し、我々は強制的に島を追われた。以来77年にわたり、幾多の苦難と闘いながら、再び古里に帰ることを一心に願い、北方領土返還要求運動の先頭に立ってきた」と自身のあゆみを振り返った。

 そして「昨年2月のロシアのウクライナ侵攻に伴い、平和条約交渉の中断をはじめ、ビザなし交流や自由訪問の一方的な停止、さらに、人道的な見地から行ってきた北方墓参が見送りになるなど、先行きの不安が募るばかりだ」と訴え、「日ロ関係がかつてなく悪化し事態が長期化する中、北方領土問題がこのまま置き去りにされることのないよう、政府に対し一日も早く、四島への訪問事業の再開、そして返還への道筋をつける具体的かつ実質的な成果が見える力強い外交交渉を強く求める」と決意を述べた。

 大会の最後では、一般参加者ら全員が拳を突き上げ、領土返還を訴えた。

 北方領土の日は、日本とロシアとの国境を択捉島とウルップ島の間に定めた「日露通好条約」が1855年2月7日に締結されたことに由来し、1981年に閣議了解された。(山本智之)