米中はトゥキディデスの罠に陥るのか 気球撃墜が示す根深い相互不信
米軍機が中国の気球を撃墜し、中国政府が反発を強めている。気球は何のためにいま、米国の上空を飛んだのか。真相はなお不明だが、確かなのは、両国の間の不信の根深さが浮き彫りになったことだ。
「予想外の形で米国まで飛んでいった気球は、予想外の形で昨今の米国の対中政治の奇怪な現象を検出した」
撃墜の問題を報じる中国のニュースアカウントには、読者からのそんな書き込みも現れた。この問題は、米議会などで根強い対中脅威論を背景にして演出された、政治性の強い問題だとの受け止めだ。
米国の言うとおり、機密の収集と監視が目的の「スパイ風船」なのか。それとも、中国側が主張するような、気象分析などの科学調査を目的とする民間の気球が偏西風にあおられて過って侵入したのか。真相は今後の調査を待つしかない。
今の段階で、この気球がこの上なく象徴的に示したのは、米中の間に横たわる相互不信と、関係修復の道のりの険しさだ。
古代ギリシャ 歴史学者の名を持つ「罠」
両国は昨年11月、インドネシア・バリ島でようやく実現した初の対面での首脳会談で、ハイレベルでの意思疎通を重ねていくことの重要性で一致した。
台湾海峡などでのにらみ合い…
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- 【解説】
中国がそれまでは「遺憾の意を示す」といった下手に出ていたところから、撃墜によって一気にボルテージを上げてきたのは、単に中国の気球を破損したという所有物に対する攻撃に怒ったのではなく、習近平政権が目指してきた米中対立の緩和、エスカレーションコ
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