「マウントをとられる」となぜ嫌か 受け手の心に潜むコンプレックス

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中島美鈴
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 ここ数年「マウントをとられて嫌な思いをした」といった文脈で、「マウント」や「マウンティング」という言葉が知られるようになりました。これは、相手に対して自分の方が地位や資産、学歴などが上であると示すことです。いわゆる「自慢」と似た感じでしょうか。

 「マウントをとる」ことが嫌われるのは昔からですが、近年注目されるようになったきっかけは、SNSで誰もが私生活を投稿できるようになって、直接会わなくても、直接言葉にしなくても、「毎日あんなぜいたくな物を食べてるんだ」「あんなところに住んでるんだ」と結果的にマウントをとっているように見える場面が増えたことだと言われています。

 そして、多くは、マウントをとる人に問題があるように語られることが多いようです。たとえば、「自己顕示欲が強い」とか「相手に自分が優れているところを見せたいんだ」といったかんじです。

 今回の記事では、「相手にマウントをとられて嫌な気持ちになる」側の人の心理を分析したいと思います。

その言葉はマウント?

 ここで、マウントをとられてうんざりしている主婦アカネさんをご紹介します(架空の人物です)。

 アカネ「あのママ友、すぐマウントとってくるから、つきあいづらいんだよね。つきあいやめるわけにもいかないし、ほんとに疲れる……」

 というのも、アカネさんが一緒にPTA役員を務めるママ友は、いつもこんなかんじなのです。

 たとえば、役員みんなで飲み会をしようという話になったときにも、そのママ友は開口一番にこう言います。

 ママ友「えー、その日、行けるかな。主人に聞いてみないとわからないなあ。」

 この言葉を聞くと、アカネさんはこう思うのです。

 アカネ「はいはい、あなたはご主人に愛されているんでしょうね。いちいち外出で許可がいるってどういうことよ。」

 また、子どもの習い事について話すときには、

 ママ友「子どもがどうしても全部の習い事続けたいって言ってきかないのよね。私はもう少しゆっくりさせたいのに。」

 といいます。アカネさんはこう思います。

 アカネ「いいわよね。なんでも素直に取り組む子どもで。しかもどれも得意で。何が『全部続けたい』よ。ぜいたくな悩みよ。うちの子なんて、なんにも続かないのに。」

 年末の大掃除やおせちの準備で忙しいわねと話した際にも、

 ママ友「あ! そうそう、年末に会ったときおせちどうしよーって言ってたよね。あれどうした? うちは毎年〇〇デパートのを注文してるよ。あれ、早期予約がなんと9月から。早めが勝負よね!」

 といいます。アカネさんはこう思います。

 アカネ「だからさ、そんな高級おせち買う余裕あるなら、誰も悩まないっていうの!」

 さて、みなさんはアカネさんと同意見ですか? ママ友にうんざりしますか? それともママ友には非はなく、過剰に反応するアカネさんの側に問題がありそうですか?

双方に原因があるとしたら

 臨床心理士としてカウンセリ…

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中島美鈴
中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。