置き去りだった議論 価格や配偶者同意、中絶薬の普及への課題は

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後藤一也
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 人工妊娠中絶の方法として、飲み薬が日本でも選べるようになりそうだ。厚生労働省の専門家部会が27日、経口中絶薬「メフィーゴパック」の薬事承認を了承した。妊娠初期の選択肢は手術のみだった日本の現状は、海外と比較しても遅れが指摘されてきた。普及に向けてどんな課題があるのか。(後藤一也)

 世界保健機関(WHO)は、妊娠初期の中絶の方法として「経口中絶薬」か「吸引法による手術」を推奨している。

 経口中絶薬はフランスと中国では1988年に承認された。世界ではすでに広く使われている。

 手術も、世界では90年ごろには金属の器具を使って胎囊(たいのう)などを取り出す「搔爬(そうは)法」から、「吸引法」に切り替わった。搔爬法は子宮内に傷が付くおそれがある。だが、手動の吸引法が日本で認められたのは2015年。現在、少しずつ置き換わりが進んでいる。

「女性の人権問題、置き去り」

 薬も手術も世界から30年近く遅れているのが実情だ。北里大の斎藤有紀子准教授(生命倫理学)は「海外では薬も手術も女性の体に負担が少ない方法に切り替えてきた。初期中絶に手術の選択肢しかない日本は、中絶をめぐる女性の健康・人権問題を置き去りにしてきた」と指摘する。

 日本では、中絶に否定的な見方も強くあり、安全な中絶を選択するのは女性の重要な権利とする考え方が社会的に広まらないまま、手術が続いてきた。

 ようやく選択肢が増えるが、「使いやすさ」という面では課題もある。「配偶者同意」もその一つとされる。母体保護法は、中絶について、医師が本人と配偶者の同意を得る、と定めている。相手が配偶者でなくても、同意の署名を求める医療機関もあり、その結果、薬を使える期間が過ぎてしまう恐れもある。

 中絶費用の負担の重さに加え…

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