コロナ禍と物価高で加速する生活危機 安全網の「穴」ふさぐには

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記者解説 編集委員・清川卓史

 2022年の大みそかの午後。東京・新宿の都庁の足元に、食品配布を待つ長い列ができた。毎週土曜日に配る自立生活サポートセンター・もやいによれば、この日並んだのは644人。支援を始めた20年4月の6倍を超す水準だという。

 女性や子ども連れも並んでいる。貧困問題の取材を長く続けてきたが、コロナ禍に見舞われる前は、こんな光景は目にしたことがなかった。「食料がないと生きていけない」。4歳の子の手を引く女性の言葉に胸をつかれた。

 IT関係の仕事をフリーランスとして請け負う20代の男性は、昨年秋から食料支援を利用しているという。行政の支援を利用しないのか尋ねると、もっと苦しくなれば頼るしかないと認めつつ、自分が使えるような制度は「頭に浮かばない」と首を振った。アパートなどに住んでいても、低年金で生活が苦しい高齢者の姿もめだつ。

 こうした状況に、もやい理事長の大西連さんは「前代未聞の非常事態です」と危機感を募らせる。

 なにが起きているのか。新年を目前にした31日夜、別の現場でも話を聞いた。NPO法人「TENOHASI(てのはし)」は、東京・池袋の公園で定期的に炊き出しをしてきた。こちらも長い列ができていたが、改めて感じるのは、ホームレス状態ではない人が相当数いることだ。

 派遣やアルバイトの仕事がコロナ禍で途切れがちになり、食料配布でしのぐ人にも出会った。飲食店アルバイトの20代男性はシフトが減らされ、この1カ月ほど公園に通っているという。

ポイント

 コロナ禍に物価高騰が追い打ちをかけ、低所得層の暮らしの危機は深刻化している。生活保護制度や住民税非課税世帯への支援はあるが、対象から外れる層は厳しい。安全網の「穴」をふさぐため、食料支援や家賃補助などについて公助の拡充が必要だ。

 もやいの大西さんは、家や仕…

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    大村美香
    (朝日新聞記者=食と農)
    2023年1月30日10時31分 投稿
    【視点】

    食と住は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために重要な柱です。これ以上の悪化を招かないためにも、提案されている支援策が早く実施されることを望みます。食生活では、国民健康・栄養調査で、所得が低い人ほど、バランスの良い食事を取る回数が少ないと

    …続きを読む