新任教員に大規模採用前研修 神戸市 背景に教員不足

鈴木春香
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 神戸市教委は、初めて教壇に立つ教員を対象に大規模な「採用前研修」を始める。教員不足で採用数を大幅に拡大しており、教員の質を確保するため育成を強化する必要性が高まった。自治体間の人材獲得競争が激化する中で、研修の手厚さを受験者にアピールするねらいもある。

 採用前研修は、今年4月から教壇に立つ新規採用の教員約150人と臨時講師約110人を対象に、2月1日~3月17日に行う。校種ごとに小学校15日間、中学・高校9日間、特別支援学校5日間を受講し、模擬授業を通じた授業づくりや生徒との関係づくりのポイントを学ぶ。

 従来は1月に半日、座学で教員の心構えなどを教えていたが、質量ともに大幅に拡充することになる。採用前に研修をする自治体はほかにもあるが、これほどの規模で実施する例はないと市教委はみている。

 長田淳教育長は20日の会見で「警察や消防は(実務に入る前に)学校で教育を受ける。教員も本来はそういうものが必要ではないか」と話した。新規採用で着任後いきなり教壇に立つことに対し、以前から不安の声が多くあったという。

 市教委がここに来て大幅な見直しに踏み込んだ背景には、深刻化する教員不足がある。市立小中学校では昨年5月時点で計26人の教員が不足していた。前年同時期は2人で、不足が急速に進んだ。

 市教委は、免許を持ちながら教職を離れている「ペーパーティーチャー」を教育現場に呼び戻そうと、研修プログラムを昨年初めて実施。さらに2023年度の採用者数を、前年度比205人増の451人と倍近くに増やした。

 ただ、23年度採用試験の志願者数は22年度より約100人減って1836人。人員を確保しようと採用者数を増やしたにもかかわらず志願者数が減ったため、実質倍率は全国トップクラスだった7・1倍(22年度)から平均水準の3・6倍(23年度)に急落した。

 志願者から見れば受かりやすくなったと言えるが、市教委の思いは複雑だ。「これまでは一定の競争倍率が教員の質の担保につながると考えてきた」(担当者)。激しい競争が無くなれば一般に、教員の質の確保が難しくもなる。さらに初めて教壇に立つ人も大幅に増える。「一定の研修が必要」と判断せざるをえない事情も見える。

 教員不足は全国的な問題で、一部の自治体では、受験者数が採用見込み数を下回る「定員割れ」も起きている。兵庫県内でも「学級数の多い都市部で、より深刻な印象がある」(教職員組合の関係者)という。特に近年は若い教員の退職が目立つといい、不足による労働環境の悪化も一因とみられている。

 市教委ではこれまで足りない人員を臨時講師で穴埋めしてきたが、近年はその獲得も難しい状況だ。今後は正規教員の割合を増やし、安定した教員確保に努める方針だという。(鈴木春香)

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