陸上自衛官がパワハラ訴え「ゆがんだ現状告発」 休職強要、同僚自殺

寺島笑花
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 陸上自衛隊の水陸機動団(相浦駐屯地長崎県佐世保市)の1等陸曹の男性が10日、長崎市内で会見を開き、上司から休職を強要されるなどのパワハラを受けた、と明らかにした。「ゆがんだ団の現状を広く社会に告発する」と話し、謝罪と名誉回復を求めている。

 会見したのは、同団通信中隊の40代の1曹。1曹の説明によると、2021年11月、自殺未遂で入院していた同中隊の3等陸曹が死亡。部内の調査で、この3曹が自殺を図る前、上司の陸曹長から、精神状態に関するアンケートを書き換えさせられるなどのパワハラを受けていた経緯が発覚した。団は「(パワハラと3曹の)自殺との間に因果関係はない」としているが、陸曹長は11月9日付で役職を解かれた。

 1曹自身はこの件に関与していなかったにもかかわらず、上司の中隊長から「17日間休職するよう強いられた」と訴えている。その後、これとは別に、駐屯地内で食事の支給申請をしていないのに食べたとして、警務隊による「取り調べを受けた」と主張した。

 1曹によると、支給申請をしていない隊員が残飯として廃棄される食事を食べる「残飯喫食」は、「上司の指示のもとで部内で日常的に行われていた」という。駐屯地内の複数の隊で、実際に食べられた食事数が申請数を上回っていることが内部データでも確認されている、とも主張している。

 1曹は休職の強要などによって精神的な苦痛を受けたとして21年12月にうつ病と診断され、22年2~6月に休職。これまで、陸自内のパワハラホットラインや団の幹部に申告したが、「対応してもらえなかった」と話している。今後の自衛隊の対応によっては刑事告訴も検討していくという。

 同団広報班は取材に「1曹が中隊長からパワハラを受けた被害者であることは認識しており、調査を進めている」と回答。一方、「団側が1曹に休職を強要した事実はない」としている。また、駐屯地内の「残飯喫食」については「団として(公式に)認めていない」と回答。1曹以外の隊員や、他の隊についても「実態を調べるべきだと考えている」と述べた。1曹の告発については「出来るだけ早く事実関係を調査し、適切に対応していきたい」としている。(寺島笑花)

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    伊木緑
    (朝日新聞記者=スポーツ、ジェンダー)
    2023年1月11日22時25分 投稿
    【解説】

    元陸上自衛官の五ノ井里奈さんが訓練中に受けた性被害を告発したことで注目された自衛隊のハラスメントですが、五ノ井さんが昨夏、オンライン署名サイトChange.org Japanの協力で実施したハラスメントに関するアンケートに回答したのは146

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