那須・栃木の両特別支援学校の寄宿舎めぐり大揺れの1年

小野智美
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 那須(那須塩原市)、栃木(栃木市)の両特別支援学校寄宿舎の存廃をめぐり、大きく揺れた1年だった。来年3月での廃止を決めた県教育委員会に対し、保護者たちは存続を求めて署名活動を展開。県教委は今月初めに廃止の延期を表明した。取材で印象に残った場面をふりかえりたい。

 4月。那須特別支援学校の寄宿舎の入舎式を訪ねた。入舎生は中高生26人。「早起きをがんばる」「友達をたくさんつくる」など抱負を一言ずつ述べたが、なかには緊張で声が出ない生徒もいた。式後も落ち込んで立ち上がれない。その肩を寄宿舎の指導員が抱き寄せていた。

 5月。同校で県教委による廃止の説明会があった。「残してほしい」と保護者は口々に訴えた。ある父親は、部活のない生徒たちが先輩や後輩と過ごせる貴重な機会になっていると指摘し、「子どもたちが寄宿舎でどれだけ成長するか、見てください」。

 7月。寄宿舎の納涼祭があった。療育手帳の区分が軽度の生徒も重度の生徒もいる。寄宿舎の指導員はみんなで楽しめるゲームを用意した。生徒の笑顔があふれていた。帰り際、出口の七夕飾りに目を留めた。生徒の字で「きしゅくしゃをのこしてください」「きしゅくしゃがなくなりませんように」と書かれていた。

 8月。炎暑の街頭で存続にむけて署名を呼びかける保護者たちを取材した。自身の娘は重いてんかんで寄宿舎を利用できないと話す母親がいた。署名活動に参加した理由を聞くと、「子どもの成長を望む気持ちは一緒ですから」。

 そして、今月。両校の保護者が県議会に出した廃止の再検討・存続を求める陳情について、非公開での委員会審査があった。委員会後、石坂太委員長(とちぎ自民党)と関谷暢之副委員長(同)が議事堂ロビーで会見し、記者団に「結果は不採択」と告げた。

 質疑応答の冒頭、県職員が「順に各社1問ずつ」と言い渡し、補足質問する記者を「質問1回で!」と制止した。「1問しか質問できないんですか」と尋ねると「それ、1問になっちゃいますけど、よろしいですか」。

 問いを重ねようとすると「時間となりました」。開始から11分足らず。納得できず、「もう1点だけ」と食い下がったが、「予定が入っていますので終了とさせていただきます!」。石坂、関谷両氏は「じゃあ、よろしくお願いします」と言い、立ち去った。

 その後の県議会で、渡辺幸子県議(同)は陳情不採択に賛成の立場でこう主張した。「陳情を採択すれば保護者と学校との信頼関係や学校運営に大きな影響が考えられ、そうした事態の被害を受けるのは当事者である子どもたちです」

 大きな影響とは何か。子どもたちがどんな被害を受けるというのだろうか。(小野智美)

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