「年の瀬にこんなこと」 山形県鶴岡市の土砂災害、近隣住民に驚き

西田理人 滝沢貴大
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 山形県鶴岡市西目で31日未明、住宅の裏側にある斜面が崩落し、約10棟の建物が巻き込まれる土砂災害が起きた。鶴岡市消防本部によると、現場の住宅に住む70代女性と80代男性の夫婦と連絡がついていないという。静かなはずの年の瀬に起きた突然の出来事に、近くの住民にも動揺が広がった。

 現場近くに住む50代の女性の家を通りがかりの人が訪れたのは、深夜のことだ。「こんな夜中にいったい何だろう」。不審に思いながらインターホンに出ると、こう告げられた。

 「民家が倒壊して大変なことになっています」

 ただ、そのときは真夜中に突然やってきた来訪者の存在が不気味に感じられ、外には出なかった。

 女性が深刻さを認識したのは、その少し後だ。今度は自宅に警察官が訪ねてきて、土砂崩れが起きたことを伝えられた。警察官が示した現場の写真には、倒壊した多数の家屋が写っていた。

 「夕方に近くを通った時には何も起きておらず、夜に大きな音も聞こえなかった。にわかには信じられなかった」

 女性が知る限り、かつて周辺で土砂崩れが起きたことはないという。ただ市のハザードマップには、山沿いの一帯が「土砂災害警戒区域」に指定されていた。「高い山ではないが、山を背負っている以上は危険な場所に住んでいたのだと改めて思った。でも、今年は今のところ降雪も多くはない。なぜ崩れたのか不思議でなりません」と話す。

 女性は夫と子ども2人の4人暮らし。この日は普段は離れて暮らす別の子ども2人も帰省して、家族水入らずで年越しの準備をしていたところだった。自宅に被害はなかったが、警察官から「家から離れて」と促され、一家そろって鶴岡市内に住む両親のもとへ身を寄せることを決めた。

 「せめて用意したおせち料理などだけでも取りに帰りたいが、家に近づけるのかどうか。年の瀬にこんなことが起きるなんて」

 土砂崩れが起きた現場からほど近い東源寺の住職、川妻裕幸さん(65)は午前6時ごろ、現場を見に行った。「100メートルくらいは山肌が落ちていた」。見慣れていた景色が一変したことに衝撃を受けた。

 午前3時ごろに起床すると、停電が起きていることに気がついた。昨晩は雨も雪も降っていなかったのに、なぜ停電したのか不思議に思っていたところ、赤色灯とサイレンの音で土砂崩れに気づいたという。

 寺から現場までは200メートルほど。別の山のふもとだが、現場も東源寺も土砂災害警戒区域内に位置する。

 「『今度はうちかな』と思ってしまう。怖い。昨晩は雨も雪もなかった。じわじわと地盤が弱っていたのだろうか」(西田理人、滝沢貴大)

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