小学校の日直当番が嫌で仕方がなかった。

 なぜなら、みんなの前でスピーチをしなければならないから。1週間前から食事の量が減り、睡眠が浅くなる。

 高崎経済大(群馬県)4年の岡部友世(ともせ)さん(21)にとって、それは「死刑台に立つようなもの」だった。物心が付いた頃から、言葉がつかえる言語障害の一種「吃音(きつおん)」の症状がある。

 スピーチ当日。

 「……、……」

 言葉が頭に浮かんでいるのに、のどにつっかえて出てこない。

 クラス中の視線を集めたまま、続く沈黙。自分の心臓がバクバク鼓動する音が聞こえた。どう乗り切ったかはよく覚えていない。

 嫌なことは他にもあった。幼稚園の発表会で、自分だけセリフが言えなかった。中学受験の面接ではうまく話せなかった。

 一方、両親は幼い頃から「そこも含めて君という存在だ」と言い続けた。小学校の先生は、みんなの前で症状を説明してくれた。

 中学から高校にかけ、特定の単語が言えなくても、同じような意味の言葉で即座に言い換えることで、日常会話でひっかかることはなくなった。友達もでき、話すことが好きになった。

 ところが、大学ではかつてない壁にぶつかった。

 就職活動。

 苦手な面接が主な判断材料になる。そのうえ、コロナ禍でオンラインが主流になったのが痛かった。オンライン授業などを経験し、対面より症状が出やすいことがわかっていた。

 想像以上の苦悩が待ち受けていた。

 吃音を抱えた岡部さんの就活は、面接でうまく話せずに内定がなかなか出ず、長期化します。コミュニケーションに困難を抱える学生の就労や、支援のあり方について考えます。

パソコン画面に大写しの面接官 「た……、……」

 3年生だった2021年夏。1…

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