岸田文雄首相の判断がまた、遅れた。首相は失言した葉梨康弘法相をいったん続投させると決めたが、批判がやまず、ようやく事実上の更迭を決めた。後手後手の対応に、首相の資質を問う声が与党内からも出てきた。
11日午後1時半ごろ、首相は自民党幹部に電話をかけた。
「国会にご迷惑をおかけすることになるのでお伝えします。葉梨さんを更迭することにしました」
わずか1時間前、首相は参院本会議で更迭を求める野党議員に「説明責任を徹底的に果たしてもらわなければならない」と続投を宣言したばかり。急転直下の更迭劇だった。
死刑執行の役割を軽んじた葉梨氏の失言から一夜明けた10日、与党内は辞任不可避との見方が強まっていた。与党幹部は首相に「このまま外遊にいけば、ずっと野党に追及され続ける」と進言していた。派閥幹部は「(葉梨氏は)身内の岸田派なんだから、気兼ねなく更迭出来る」と話した。
それに対して、首相官邸の動きは鈍かった。10日朝、松野博一官房長官は謝罪する葉梨氏に厳重注意をしただけだった。
同日夕、官邸では首相や首相秘書官らが出席する通称「御前会議」が開かれ、葉梨氏への対応を協議した。出席者によると、首相は今年度第2次補正予算の成立と、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けて悪質な寄付要求行為の禁止などを盛り込んだ新法を重視。下げ止まらない内閣支持率回復には、それらを成立させることが必要と考えているが、臨時国会の会期末は12月10日に迫る。葉梨氏を交代させれば、国会日程はさらに厳しくなる。
「どうすればいいかを考えたときに続投だった。こっちだって苦しいし、難しい」。官邸幹部は語った。
決定打が11日朝に待っていた。
葉梨氏が閣議後会見で、過去に…