岸田文雄首相のぶら下がり取材への向き合い方を専門家はどう見るのか。元テレビ局報道キャスターで、民主・自民の3政権で内閣広報室審議官などを務めた白鷗大学の下村健一特任教授に、その特徴と問題点を聞いた。
――政権にとって、正式な記者会見と比べて、ぶら下がり取材はどんな意味合いがあるのでしょうか。
あえて広報する側の目線で言うと、記者会見よりもぶら下がり取材の方が好都合です。正式な会見場が設置されないぶら下がりでは、「じゃあこれぐらいで」と、言いたいことを言ったら立ち去れます。
記者にとっては、1問目の答えを聞いたときにその場で切り出す「さら問い」でいかに首相の本音を引き出すかが大事ですが、それをほぼできずに終わってしまうこともあります。
――岸田政権は積極的にぶら下がり機会を設けていながら、支持につながっていないのはなぜですか。
首相の声が届かないのは、言いたいことしか言っていないからです。「伝える広報」と「伝わる広報」があるとしたら、いま首相がやっているのは「伝える広報」で、「伝わる」から逃げています。
これを変えるためにできることは単純で、聞かれたことに答えればいい。首相に問われているのは「聞く力」よりも「答える力」です。言いたいことを100時間言っても、聞かれたことに10分間答えることにはかないません。
――都合のいいときだけ、都…
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- 【視点】
官邸でのテレビ入りぶら下がり取材をうまく政権浮揚に活用したのは、小泉純一郎氏でした。小泉政権当時は1日2回、午前と午後に首相がぶら下がりに応じるやり方をとっていました。自信があったからでしょう。 小泉氏は大した役者で、芝居がかったワン
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