東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の事故に備え、住民の避難を支援するアプリが開発された。事前に氏名や住所などを登録しておけば事故直後に避難先が表示され、どこに誰が避難しているのかもすぐに共有できる。県は防災以外の機能も盛り込み、行政のデジタル化の土台に据えたい考えだ。

 「原子力災害版避難支援アプリ」は、宮城県と電子署名・認証サービスを手がける「ポケットサイン」(東京)が共同で開発した。

 スマートフォンに入れたアプリでマイナンバーカードを読み取り、氏名、住所、生年月日、性別を登録しておけば、原発事故が起きた際、県がスマホの画面に行くべき避難所名を知らせる仕組みだ。

 さらに、避難所に掲げられたQRコードを読み込むと、「チェックイン」が完了。避難者一覧表が県のサーバーに集積され、市町村はどこに誰が避難しているかを把握できる。

 性別や年齢層も分かるため、必要な支援や物資の参考になる。スマホで通信できない場合は、アプリでQRコードを表示し、避難所のパソコンで読み取る。

 県庁で9月22日にアプリの実証訓練があり、従来の避難方法との比較と検証があった。

 まずは住民役の県職員100人が、避難所を案内するために各市町村が設置する「避難所受付ステーション」で住所や氏名などを告げる流れだ。ただ、ステーション前には長蛇の列ができ、開始後10分で避難所に登録できたのは約30人だった。一方、アプリを使えば、開始後2分12秒で100人全員が避難所に移動し、避難者一覧表まで完成した。

 スマホを持っていない人は「どの避難所でもOK」とし、避難所で住所・氏名などをQRコードにして、印刷して渡す。これを避難所の受付でパソコンで読み取ってもらえば、アプリと同様に登録できる。

 訓練に参加した村井嘉浩知事は「これまでの訓練でも混雑していた避難所受付ステーションは廃止する」と宣言。今年度中に予定する避難訓練で実際にアプリを導入し、「県と市町村が一緒になって改善していきたい」と話した。

 今回の訓練には、県内の首長や防災担当者らも出席。石巻市の斎藤正美市長は「アプリでびっくりするほど早くなる。住民対象の研修会も開いて普及させたい」。女川町の須田善明町長は「(アプリ利用の人が)たとえ50%でも、現場ではものすごい省力化が図れる」と期待を抱く。

 アプリは原発事故以外の災害でも活用できるほか、他の機能も追加できる。避難者に必要な物資を聞く緊急アンケートや、道路の破損などを通報する機能、小規模商店向けの「地域ポイント」によるキャッシュレス決済などへの活用も模索する。(原篤司)

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