安倍晋三元首相の国葬で菅義偉前首相がよんだ追悼の辞に、「感動した」などの声が多くあがっている。菅氏は、安倍氏が読みかけていた本「山県有朋」からある歌を引いたが、同書の文庫版解説を手がけた政治学者は「!」と「?」を感じたという。どういうことなのか、空井護・北海道大教授に話を聞いた。
インタビューシリーズ「国葬を考える」
安倍晋三元首相の国葬をめぐり、世論の賛否が割れています。首相経験者としては1967年の吉田茂氏以来戦後2例目となる今回の国葬をどう考えたらいいのでしょうか。様々な角度から有識者らに聞きました。
――「衆議院第1会館、1212号室の、あなたの机には、読みかけの本が1冊、ありました。岡義武著『山県有朋』です」。菅義偉前首相の追悼の辞で話題となった同書の文庫版解説を手がけられています。さぞ驚かれたでしょう?
授業があったので国葬のテレビ中継は見ておらず、担当編集者からの「大変です、増刷します」という電話で初めて知りました。確かに驚きましたね。著者の岡義武は泉下でもっと驚いたことでしょう。
「そんな奇遇が世の中には…」
――「山県有朋」は岩波新書として1958年に出版され、3年前に文庫に収められました。国葬後に菅氏が語ったところによると、安倍晋三元首相は生前、「薦めてくれる人がいて読んでいるんだ」と話していたそうで、それはJR東海元会長の故葛西敬之氏だと言われています。
気軽に人にお薦めしにくい本ですよ、これは。漢文が頻出して難しいし、それほど面白いわけでもない。幕末から明治、大正に至る政治の流れが見事にまとめてあるので、大学の授業の参考文献などとしては便利ですが、とても気楽には読めません。まあ、それが古典というものなのですが。
――菅氏は「ここまで読んだ、という、最後のページは、端を折ってありました。そしてそのページには、マーカーペンで、線を引いたところがありました。しるしをつけた箇所にあったのは、いみじくも、山県有朋が、長年の盟友、伊藤博文に先立たれ、故人を偲(しの)んで詠んだ歌でありました」と。
「かたりあひて 尽(つく)…
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