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 安倍晋三元首相の国葬が近づいています。岸田政権は参列する要人との「弔問外交」を通じ、各国との関係を強めるとの考えを示していますが、成果は期待できるのでしょうか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹さんに聞きました。(聞き手・高島曜介)

インタビューシリーズ「国葬を考える」
安倍晋三元首相の国葬をめぐり、世論の賛否が割れています。首相経験者としては1967年の吉田茂氏以来戦後2例目となる今回の国葬をどう考えたらいいのでしょうか。様々な角度から有識者らに聞きました。

 ――「弔問外交」は、国家元首などの葬儀に参列した各国要人らの間で行われる外交を意味するとされています。海外ではどのように認識されているのでしょうか。

 「弔問外交」という呼び名や共通の定義があるわけではないと思いますが、元首らの葬儀では、参列した各国の元首ら代表が一堂に会する場や、葬儀を行う国と参列した国の要人同士、あるいは参列した各国の要人同士が会談の場を持つことが想定されます。

 ――今回の安倍元首相の国葬では、弔問外交によってどのような成果が期待できるのでしょうか。

外交には緻密な準備が必須

 「外交」の意味にもよりますが、ほぼ期待できません。直接あいさつをし、握手を交わすことが「外交」であるなら、一定の成果はあるでしょう。しかし、具体的な外交の成果としては、ほぼ皆無だと思います。なぜなら、外交で成果を上げるためには、どのような条件、表現で合意形成をするのかという、緻密(ちみつ)な準備が必須だからです。一方で、葬儀というのは基本的に不測の事態です。さらに、葬儀に参列する国は、どのような弔意を表明するのかについて準備をしますが、葬儀をきっかけに外交上の成果を上げようと準備をしているととらえられれば、それは儀礼を欠いているとして非難の対象になりかねません。

 ――海外も含めて、弔問外交で成果があった事例はないのでしょうか。

 1980年5月の旧ユーゴスラ…

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