寄宿舎廃止 6年間の会議録 「教育的入舎の必要性は」

小野智美
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 知的障害のある子が学ぶ那須特別支援学校那須塩原市)と栃木特別支援学校(栃木市)の寄宿舎を来年3月末で廃止する――。県教育委員会の方針はいつ、どのような形で決まったのか。情報公開請求で得られた会議録から検証する。

 朝日新聞は県教委に対し、寄宿舎を議題としたすべての会議の議事録の開示を請求し、2015年7月~21年7月の6年間の会議録を入手した。

 県立特別支援学校は全16校。そのうち寄宿舎は視覚障害のある子が学ぶ盲学校宇都宮市)、聴覚障害の聾(ろう)学校(同)、肢体不自由ののざわ特別支援学校(同)3校と那須、栃木の計5校にある。療育手帳で最重度の子も受け入れている那須の寄宿舎は、毎年度の希望者が定員を上回る。

 開示文書によると、15年度の会議では、14年度の入舎理由を①通学困難②教育的入舎に分けて集計していた。内訳は、盲学校(①18人②2人)、聾学校(①12人②2人)、のざわ(①19人②13人)、那須(①2人②24人)、栃木(①2人②31人)。那須と栃木の教育的入舎の多さが際立つ。

 会議では次の発言があった。

 総務課 「教育的入舎とはどのようなものか」

 特別支援教育室 「主に基本的生活習慣の確立等を目指すための入舎である」

 施設課 「盲、聾、のざわの3校と栃木、那須の2校では通学圏の範囲が異なる。2校については本当に必要なのか。寄宿舎については老朽化も問題になっている。教育的入舎の必要性や寄宿舎が必要な理由を明確にする必要がある」

 学区は盲、聾、のざわの3校が全県。那須は那須町・那須塩原市・大田原市矢板市で、栃木は栃木市・鹿沼市壬生町。栃木の寄宿舎は1974年、那須の寄宿舎は78年建築だ。

 16年6月には那須、栃木2校の閉舎と転校案が出てきた。

 特別支援教育室 「閉舎して、通学困難者への対応は例えば聾学校寄宿舎を活用して富屋特別支援学校への通学を検討していきたい」

 総務課 「通学困難者は具体的にどういう子どもか」

 同室 「遠くから通学していて、その子のためだけにスクールバスの運行も難しく、保護者の送迎もできない者で、本当に限られた児童生徒しかいない」

 同課 「その子たちが聾学校の寄宿舎に入るのは影響はないか」

 同室 「保護者の了解を得てであるが、その場合には同じ知的の富屋に転校してもらう」

 聾学校と知的障害の子が学ぶ富屋特別支援学校は同じ宇都宮市内にある。

 17年7月には次の発言があった。

 総務課 「月から金まで自宅から離れて生活をするならば聾学校でも良いという考え方は納得できる」

 施設課 「聾学校寄宿舎の収容人数は足りるのか」

 特別支援教育室 「近年の栃木と那須の通学困難者は数名程度であるため、聾学校寄宿舎への収容は可能と考える」

 転校案は21年5月の会議でも挙げられたが、7月の会議では削られた。同室は取材にこう説明した。「地域で生活できることが大事。スクールバスで対応し、21年段階で聾学校寄宿舎を使うほどの入舎生はいないことから削った」(小野智美)

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