生活保護の車利用「通院のみ」許可 息子には障害「車ない生活は…」

黄澈
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 生活保護世帯の自動車利用はどんな場合に認められるべきか――。三重県鈴鹿市社会福祉事務所が身体障害がある息子の通院に限って、車の利用を認める決定をしたことに対し、三重弁護士会は「日常生活での利用が認められるべきだ」として決定を変更するよう同事務所に勧告した。

 勧告は7月21日付。生活保護を受ける鈴鹿市在住の70代女性が人権救済を申し立て、三重弁護士会が調査していた。勧告に法的拘束力はない。

 生活保護世帯の車保有については、1963年の旧厚生省の通知で、「障害者の通院のために定期的に利用されることが明らか」などの要件を満たしていれば認めてよいとされている。

 勧告書などによると、女性と障害がある50代の息子の世帯は昨年6月、同事務所に息子の通院のため車使用を申請。同事務所は昨年7月、「利用のたびに、運転記録票に必要事項を記録し、毎月提出する」などの条件を付し、「息子の通院に限り利用を認める」と決定した。

 同事務所は決定に基づき、数度にわたり運転記録の提出などを口頭や文書で行政指導。今年6月、提出された運転記録票に虚偽記載があったなどとして、生活保護の廃止に向けた聴聞を行うと通知した。

 これに対し、三重弁護士会は勧告で過去の判例などを引き、旧厚生省通知の要件を満たして車の保有が認められたからには、「日常生活でも利用することは、生活保護法が定める被保護者の自立助長や保有資産の活用の観点から、当然に認められるべきだ」との見解を示した。

 その上で、運転記録票の提出などの条件を付け、通院に限って車の利用を認めた決定や行政指導は法の趣旨に反した過剰な制約で、移動の自由やプライバシー権を侵害するとした。

 人権救済を申し立てた女性は「障害のある息子がおり、車のない生活は考えられない。勧告に感謝している」と話した。

 鈴鹿市社会福祉事務所は「勧告に強制力はない。現在の対応が人権侵害に該当するとも考えていない」としている。(黄澈)

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