(魂の中小企業) レゴブロックは組織を前向きにする切り札

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 左の写真をご覧ください。

 レゴのブロックで表現した、ある組織の形です。その組織は、精密部品のメーカー、だと思ってください。

 左側にいる白い3人は、現場で働いています。半導体や液晶といった精密部品をつくっているので、現場にホコリを入れてはなりません。だから、クリーンルームの中で働いているので、服装は白です。

 右側の3人は、事務所で働いています。技術企画や設計、管理などの担当です。

 現場と事務所の間に、距離がありますね。さらに、真ん中には、壁。両者の間に一体感がなく、コミュニケーション不足で組織がバラバラなのです。真ん中にいる人がリーダー。組織を何とかしようと思っているのですが……。その壁は微妙な高さです。この壁は乗り越えられるはずなのですが……。

 これがあなたがいる会社、あなたがいる組織だとしたら、どうします?

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 レゴのブロックをつかった企業研修「レゴ・シリアス・プレイ」、略してLSPの一例である。

 何人かが集まってのワークショップ。その場で、レゴブロックをつかって今の企業、今の自分などを表現する。思いのまま、忖度(そんたく)なしで表現する。そのうえで、なぜこういう形にしたのかを吐露していく。

 何が足りないのか。理想の組織に向けて何をしようか、と意見を出し合う。コミュニケーションが生まれ、笑いが生まれ、絆が生まれる。仕事へのモチベーションが上がる。

 それが、LSPだという。

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 レゴは1934年、デンマークにできたブロック玩具の会社です。テレビゲームの普及などで経営に苦しみ、1990年代、LSPを生み出したのです。

 LSPの効果をあげるには、参加者たちの先導者「ファシリテーター」が欠かせません。LSPの協会公認の先導者になるためには研修を受けなくてはなりません。

 「ココロ・ヅクリ工房」

 2020年にできた会社です。社長の井ノ口英明さん(48)は全国各地で、LSPをつかった研修をしています。もちろん、公認のファシリテーターです。

 「閉塞(へいそく)感いっぱいで元気のない日本を、前向きにしたい」

 そんな井ノ口さんのストーリーです。

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 神戸市に生まれ、兵庫県明石市で育った。ぜんそく持ちで、アトピーにもなる。だから井ノ口少年は思った。

 〈ボクは医者になる〉

 中学受験をがんばり、中高一貫校に入学した。入ってすぐ、自分の実力のなさが身にしみた。けれど、望みは捨てられない。最後の希望だと、ある医科大学の推薦試験を受けた。落、ち、た。

 でも、苦しむ人の何かの役に立ちたい。そこで、地方の国立大学の工学部に入った。遺伝子工学を研究し、少しでも医療に役立ちたかった。大学院の修士にも進み、薬メーカーなどに就職できれば、と思っていた。

 就活を、氷河期で迎えた。

 井ノ口が大学院に進んだ19…

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