昭和天皇、戦況悪化に苦悩 侍従武官の日記、国会図書館で初公開

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編集委員・北野隆一

 太平洋戦争中に昭和天皇を軍事面で補佐する侍従武官を務めた旧陸軍軍人の坪島文雄(つぼしま・ふみお、1893~1959)の日記の公開が、国立国会図書館憲政資料室で始まった。戦況が悪化し、軍による報告内容への信頼性が揺らぐ中、天皇が苦悩する様子が記されている。

 坪島は広島県出身。日中戦争に参戦し、参謀本部や陸軍大学校教官などを歴任。少将だった41年9月に侍従武官に就任した。蓮沼蕃(はすぬま・しげる)・侍従武官長に次ぐ立場で、軍の報告を天皇へ取り次ぎ、北方や南方の激戦地に赴いて天皇の言葉を伝えた。45年4月に陸軍に戻り、8月の敗戦は師団長として九州で迎えた。

 日記は2021年11月に遺族から国会図書館にノート13冊などが寄贈され、今年5月27日から公開された。3年半務めた侍従武官時代の記述がある日記は9冊。表紙に「服務の参考」などと記されている。宮内庁書陵部が昭和天皇の生涯を記した「昭和天皇実録」の典拠資料にはなく、原本の公開は初めてとなる。

 44年3月27日の日記によると、天皇は陸軍の後宮淳(うしろく・じゅん)・参謀次長の報告を聞いた後、蓮沼武官長を呼び、質問した。「世界全般の情勢がしだいに悪化してきたところ『わが国はしっかり頑張り通せば何とかなる』と言っているように聞こえる。頑張ることに不同意はないが、国を最後の土壇場まで追い込むことは、戦後の国の回復を困難にするだろう。戦争の終末について十分に考えているか」

 蓮沼武官長は恐縮し「(東条…

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