芥川賞直木賞まもなく発表 候補全作を読み比べ 20日に選考会

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中村真理子
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 第167回芥川賞・直木賞日本文学振興会主催)が20日夕方に発表される。選考会は東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれる。新たな芥川賞作家、直木賞作家になるのは誰か。全候補作を紹介する。

 芥川賞候補は5作。初めての候補が4人、デビュー作もあり、近年まれにみる新鮮な顔ぶれとなった。

 今年上半期の文芸シーンで注目を集めたのが、年森瑛(あきら)さんの「N/A」(文学界5月号)。文学界新人賞を受けたデビュー作だ。タイトルの意味は「該当なし」。主人公は女子高に通う生徒。拒食症だLGBTだと枠にあてはめようとする周囲を嫌悪し、何にも該当しない存在でありたいと願っている。

 候補5作はどれも現代に生きる若者のしんどさが投影されているが、「N/A」が現実性では群を抜いている。あえて瑕疵(かし)をあげれば、多様性への目配りが正しすぎることだろうか。正しさは新聞記事なら何より重要だが、小説はそうとは限らない。ベテラン作家で構成される選考委員には違う判断もありそうだ。

 個人的なイチオシは、山下紘加さんの「あくてえ」(文芸夏季号)。19歳の主人公は、90歳の祖母を「ばばあ」と呼ぶ。お人よしの母は、病に倒れた祖母の介護に心身を注ぐが、3人の生活は行き詰まる。ままならなさにいらつく祖母と孫は悪態の応酬の繰り返し。描かれる日常は地獄だが、甲州弁のあくてえ(悪態)が物語にユーモアを与えている。出口の見えない息苦しさを激情で押し流すような迫力ある小説だ。

 2回目の候補となった、高瀬隼子(じゅんこ)さんの「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)も受賞の可能性が高そうな佳作。

 同じ職場で働く男女の視点で…

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