安倍晋三元首相、演説中に撃たれ死亡 男を殺人未遂容疑で現行犯逮捕

 8日午前11時32分ごろ、奈良市西大寺東町2丁目の近鉄大和(やまと)西大寺(さいだいじ)駅前の路上で、街頭演説中の安倍晋三元首相(67)が背後から近づいた男に銃で撃たれた。安倍氏はドクターヘリ奈良県橿原市の県立医科大学付属病院に搬送されたが、同日午後5時3分に死亡が確認された。撃った男は現場近くで警察官によって身柄を確保され、路上から黒色のテープで巻かれた銃が押収された。

 奈良県警によると、男は奈良市大宮町3丁目の無職、山上(やまがみ)徹也容疑者(41)で、県警は安倍氏に対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。容疑を認めているという。今後、殺人容疑に切り替えて捜査する。

 捜査関係者らによると、山上容疑者は特定の宗教団体の名称を挙げて「恨む気持ちがあった」と説明。その上で「団体のトップを狙おうとしたが難しく、安倍氏が(その団体と)つながりがあると思い込んで狙った」という趣旨の供述をしている。一方で「(安倍氏の)政治信条に恨みはない」とも話しているという。自民党のホームページを見て、安倍氏の来県を知り、電車で現場に来たとも説明している。

手製の銃?数丁を自宅から押収

 犯行に使われた銃は手製のもので、長さ約40センチ、高さ約20センチ。県警は自宅を家宅捜索し、よく似た手製の銃のようなもの数丁のほか、火薬類を押収した。

 防衛省関係者は山上容疑者が2002~05年の3年間、海上自衛隊に任期制の自衛官として在籍していたと取材に明らかにした。小銃の射撃や解体、組み立てについても学んでいたという。

 山上容疑者は今年5月まで、大阪府内の人材派遣会社に在籍し、京都府内の倉庫でフォークリフトを運転していた。

 安倍氏は銃撃を受けた当時、参院選奈良選挙区に立候補している候補の応援のため街頭演説中だった。警察関係者によると、安倍氏に向けて少なくとも2発が発射されたという。

 現場で心肺蘇生処置が行われ、ドクターヘリで県立医科大付属病院に搬送された。病院によると、到着時には心肺停止状態で、首の2カ所に銃による傷があり、一部が心臓に達していた。死因は失血死だった。

 現場では朝日新聞記者も取材をしていた。安倍氏が街頭演説を始めてから数分後、安倍氏の後ろ側から銃声のような音が上がった。安倍氏の背後には、シャツと長ズボン姿で眼鏡とマスクを着用した山上容疑者が銃のようなものを手にして立っており、破裂音がさらにもう1度鳴った。その後、安倍氏は倒れ、胸元から血が出ていた。警護していた警察官が山上容疑者を取り押さえた。

 自民党奈良県連は8日午後に会見を開いた。堀井巌参院議員は「昨日(7日)夕方に元総理の来県が決まった」と明らかにした。堀井氏は「犯行について前触れはなく、容疑者に見覚えはない。歩道に多くの人がいたので聴衆の整理は私どもスタッフが15人で対応した。要人警護は県警などが対応したが、人数は詳しくはわからない」と述べた。

 街頭演説会場には、県警の警察官に加え、警視庁から派遣された警護員(SP)もいた。警察庁幹部は警備態勢が十分だったか検証する考えを示した。

 政府関係者によると、奈良市で街頭演説中に撃たれ、心肺停止の状態だった安倍晋三元首相(67)の死亡が確認された。

 安倍元首相は8日午前11時半ごろ、奈良市西大寺東町2丁目の近鉄大和西大寺駅前の路上で街頭演説中、背後から銃のようなもので撃たれた。

 警察関係者によると、安倍元首相はドクターヘリで奈良県橿原市の県立医科大学付属病院に搬送されていた。撃った男は現場近くで警察官によって確保され、路上から黒色のテープで巻かれた銃のようなものが押収された。

 総務省消防庁の発表によると、安倍元首相は8日午後1時半の時点で、心肺停止状態で、外傷は右頸部(けいぶ)の銃創と出血、左胸皮下出血があったという。

 奈良県警によると、男は奈良市大宮町3丁目の職業不詳、山上徹也容疑者(41)で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。「安倍元首相の政治信条に対する恨みではない」と供述しているという。

 防衛省関係者によると、山上容疑者は2002~05年まで3年間、海上自衛隊員だったとの情報があり、同省で確認している。

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    米重克洋
    (JX通信社 代表取締役)
    2022年7月8日18時21分 投稿
    【解説】

    安倍氏の奈良遊説は急遽決まったようだ。背景は奈良選挙区の接戦化だと思われる。弊社(JX通信社)の情勢調査でも、奈良選挙区は当初自民候補と維新候補の差が開いていたところ、今週の終盤情勢調査では維新候補がかなり伸びて差が詰まった。そうしたことか

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2022年7月8日18時46分 投稿
    【視点】

    白昼堂々と行われたテロ行為に、誰もが心の動揺は避けられない。しかし、今回のテロ行為を受けて、私たちが政治的な言論を過度に抑制したり、誰がテロ行為を助長したのかといった、犯人探し的な議論を始めることがあれば、まさに、民主主義と自由な言論へのテ

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