第15回【密着しました】百通りのドラマが集まる場所…その名は期日前投票所

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 あなたは、どんな思いで投票に来ましたか。全国の若手記者が2日、各地の期日前投票所に密着しました。訪れた有権者に声をかけ、投票の現場で起きるできごとから今回の参院選を考えました。あなたは何しに投票へ――。時系列で詳報します。

期日前投票所に密着したのは、いずれも20代の記者で、三井新(仙台市)、宮坂奈津(千葉県成田市)、御船紗子(東京都渋谷区)、宮坂知樹(新潟県南魚沼市)、高橋俊成(愛知県長久手市)、川辺真改(石川県珠洲市)、井岡諒(兵庫県尼崎市)、豊島鉄博(福岡市)、古畑航希(沖縄県宮古島市)の9人。()内は取材した投票所の所在地。取材した方のお名前はカタカナで表記しています。

08:45(東京都渋谷区)

投票所ってダサい? 記者の疑問ぶつけに「若者の街」へ

 午前8時半、JR渋谷駅(東京都渋谷区)から徒歩10分ほどの場所にある区役所で、期日前投票所が開いた。気温32度の晴天下、坂道に額に汗をにじませた人々が行き交った。周囲に並ぶ飲食店の前では、仕入れ業者のトラックが数台止まり、飲み物などを運び込んでいた。

 1400万人が暮らす首都・東京。なかでも渋谷は、ピーク時には約3千人が渡るといわれる渋谷駅前のスクランブル交差点や、最新の流行を発信してきた「SHIBUYA109」などがあり、「若者の街」として認知されている。区外から訪れる若者も多いが、区民も比較的若い。区が2020年に改訂した資料では、25~54歳の区民が区人口に占める割合が全国平均より高く、逆に、55歳以上は平均以下の割合となっている。

 記者は27歳だが、ずっと「若者の投票率が低い」と言われ続けてきた。確かに過去3回の国政選挙では、30代以下の投票率はいずれも50%を下回っている。

 なぜ若者は投票へ行かないのだろう。そんなことを考えていたとき、ふと投票所の雰囲気を思いだした。案内板や筆記用具だけが無機質に整えられ、投票立会人が一挙一動を見守る。あの厳かな雰囲気は、あまり浮ついた格好で行くと不謹慎だと怒られてしまいそうな気にさえなる。ある疑問が頭に浮かんだ。もしかして、投票所ってダサい――。

 若者が集い、次々に新たな文化を発信していく渋谷なら、答えが見つかるかもしれない。記者(27)は、宮下公園からほど近い期日前投票所の前に立ってみることにした。

08:50(愛知県長久手市)

子連れの家族が続々と投票所へ 最も平均年齢若い市に密着 

 名古屋市の東に位置する長久手市の市役所に着いた。市役所に向かうバスからは、建ったばかりにみえる戸建て住宅がいくつも見える。強い日差しが照りつけ、今日も猛暑日になりそうだ。

 ここ、長久手市は、日本の市町村の中で「最も平均年齢が若い市」だ。20年の国勢調査によると、市民の平均年齢は40・2歳。6万人の人口はここ50年間で約5倍。今も増加を続ける。

 名古屋市に加え、大手自動車メーカーの本社がある豊田市などに近接する「地の利」がある。大型商業施設も次々と進出。2005年の愛知万博(愛・地球博)の会場になったことでも知られる。跡地には「ジブリパーク」ができる予定で、投票所に並んだ投票済証にもそのロゴが載っている。

 同じベッドタウンでも、記者(27)は首都圏近郊にありながら、人口減少に歯止めがかからない神奈川県横須賀市の出身だ。1990年に43万だった人口は、2020年には39万。実家の周辺でも空き家が増えている。でも、こちらのほうが全国の地方都市によくある姿だろう。

 少子高齢化・人口減少の課題に逆行するかのような成長を見せている街の人たちは、どんな思いで暮らしているのか。成長の一方で、市民は暮らしの中で課題や悩みを感じていないのだろうか。今日はそんな話を聞いてみたい。

 なんてことを書いていたら、子ども連れの家族がどんどんやってくる。さっそく声をかけてみよう。

09:30(石川県珠洲市)

「ハンパな田舎じゃない」 能登半島の先端で希望探す

 記者(25)が訪れたのは、能登半島の先端、石川県・珠洲市。

 高齢化率51.6%に、人口減少率11.6%--。2020年の国勢調査のデータをのぞくと、日本の未来、少子高齢化を先取りする地域の実情に、やや暗い気持ちになる。

 それが、昨日、下調べを兼ねて市役所に電話をかけると、先細りする地域の状況を吹き飛ばすような若手の女性職員の明るい声が電話越しに響いた。

 「移住者が最近めちゃくちゃ増えてるんですよ」

 聞けば、昨年度の移住者は86人。13年度は20人で、4倍以上に膨れあがっていた。しかも7~8割方が20~30代の若い世代らしい。なぜ、こんな田舎に……。思わず本音がこぼれた。そのつぶやきを聞いた職員はあっけらかんと答えた。

 「田舎は田舎でも、イオンがあるような、ハンパな田舎じゃないですからね」

 コロナ禍でリモートワークが普及したことも、若者の移住増を後押ししていた。

 実はこの職員も県外の出身者で珠洲に移住してきた1人。世界農業遺産にも登録された大自然に、古き伝統や先人の知恵が息づくこの地では、「人間本来の生き方ができる」と思ったのだとか。

 期日前投票所が開いてからまもなく、最初に市役所の駐車場で、車から降りてきたのは高齢女性3人と中年の男性だった。聞けば、男性が近所の高齢女性3人を車に乗せて投票所に訪れたのだという。家族ではない知り合い同士で声をかけあって投票所を訪れる。都会では見ない光景だ。ふと、「これが珠洲なんだな」と感じた。

 その後も、軽乗用車や軽トラックが次々に止まり始めた。

09:50(兵庫県尼崎市)

投票に行く若者「意識高い」は本当?行かなかった記者が聞く

 兵庫県尼崎市、阪急塚口駅からすぐの大型商業施設「塚口さんさんタウン」の期日前投票所にやってきた。1978年の開業で、投票所の下の階には老舗らしいそば屋や喫茶店が並んでいる。

 今回の取材に、尼崎を選んだ理由は――。

 国政選挙のたびに若者の投票率の低さがニュースになる。記者(26)も選挙に必ず行くようになったのは、社会人になってからだった。

 大学時代を振り返ると、周囲の友人を見渡しても、投票はどこか「意識が高い」行動だったように思う。政治と生活が結びついている実感はほとんどなかった。数百万、数千万の票が投じられることを思うと、私の一票は「とるに足りないもの」だと感じていた。

 だが、投票に行く若者は本当に「意識が高い」人ばかりなのか。自分や家族の生活を守るため、等身大の一票を投じる人もいるのではないか。

 子育てと仕事の両立の難しさ、非正規雇用の拡大など、若者を取り巻く社会課題はよくテレビや新聞でも取り上げられているが、そういった課題と投票行動は結びついているのだろうか。

 そもそも若者は何を考えて投票しているのか。

 それを知るためにはどこの投票所に行こうかと考えたとき、思い浮かんだのが「尼崎」だった。

 兵庫と大阪の府県境にある人口45万の中核都市。JRなら大阪駅まで快速で約5分という好立地ながらも、下町らしい風情が残る街として知られる。近年は駅前を中心に再開発が進み、高層マンションも増えつつある。リクルートが発表する「穴場だと思う街(駅)ランキング 関西版」では今年、トップ5のうち4駅を尼崎市内が占めた。

 若者に静かな人気を集める尼崎なら、生粋の「尼っ子」からも、最近、尼崎に移り住んできた人からも話が聞けるはずだ。早速、取材を始めた。

10:00(新潟県南魚沼市)

苦境続く農家「魚沼産コシヒカリを作る人いなくなる」

 「日本一うまい」とも言われる魚沼産コシヒカリの一大産地・新潟県南魚沼市。南魚沼市役所に設けられた投票所に一番乗りしたクニコさん(71)は苦しむ農家の支援への期待を込めて一票を入れた。

 クニコさんは昨年、十日町市で一緒に暮らしていた長男を心臓の病で亡くした。46歳の若さだった。

 早く夫に先立たれたクニコさんは、夫が残した3千坪の田んぼを長男とふたりで世話してきた。年齢もあってそれを一人で世話するのは難しい。田んぼの借り手を探したが、「今の米価では誰も米なんか作ろうと思わない。借りてくれるひとはいない。長男が死んで農業をあきらめた」。今は耕作放棄地となっている。

 「米粉の利用促進とか、米をあまらせない政策に政府は取り組んでいない。これ以上農家を苦しめると、20年もすれば魚沼産コシヒカリを作る人がいなくなる」とクニコさんは訴える。選挙区は、農産物の市場価格が経費を下回った場合、差額を直接補償する戸別所得補償制度の復活を主張する野党候補に投票した。

 新型コロナ禍で外食産業が落ち込み、米価の下落が著しい。物価高が重なり、肥料などの資材も高騰。農家は苦境に立たされる中、米どころの有権者は何を思い一票を託すのか。今この場所で日本の食を支えている様々な世代の声を、首都圏で育ち農業には無縁だった記者(26)がじっくり聞いてみることにした。

10:30(愛知県長久手市)

塾で選挙を勉強した小学6年生「選挙って大事なんだよ」

 愛知県長久手市役所に、1組の親子が投票所にやってきた。今日はなぜ2人で?と尋ねると、父・タツオさん(48)は「一緒に行きたいって頼まれたんですよ」と笑った。コタロウ君(11)は小学6年生。まだ選挙権はない。

 「どうして行きたいと思ったの?」と聞いてみた。

 「塾で選挙について勉強したんだ。投票で議員が決まって日本を動かしていく。選挙って大事なんだよ、って」。よどみなく答えた。「国民の意見を言うためにも、選挙にはちゃんと行きたい」

 そう話す姿を見て、タツオさんは目を丸くした。「びっくりですよ。家では普通の小学生なんですが、ちゃんと考えてるんですね」。記者も、同じ年齢でここまで意見をはっきり話せた自信はない。気付けば一緒に目を丸くしていた。

 長久手は若い世代が多いそうですね、と聞くと「確かに自然も多くて子育てもしやすい。けど、最近人が増えすぎて道が混むんですよね……そこは何とかしてほしい。あとはウクライナの侵攻を見て外交も大事だな、と」。投票に込める思いを語った。

 その後も続々と家族連れがやってくる。子どもを抱っこしながら投票所へ向かう親子も。開場1時間で6、7組は来ただろうか。親子4人で投票に訪れたユウタさん(41)は「選挙ですか?いつも行きますけど、何かイベントって感じではないですね。行かなきゃいけないものなんで」と一言。「きょうはこれから買い物にいって、家族で過ごします」

10:40(千葉県成田市)

「投票の後は買い物に行こうかな」投票の前後って何しますか?

 千葉県成田市の市役所前。午前9時の気温30度。8時半の開場とともに徐々に投票所に入る人の姿が増えていく。

 「暑いから早めに来た。今日は休みだからこのあとお出かけ。買い物にでも行こうかな」。関東近辺で運転手の仕事をしているヒサオさん(64)は成田市で一人暮らし。来週は仕事で来られないという。「俺の一票で変わるなんて思ってないけど、何人か来れば少しは変わるかなって」。そんな思いで最近は欠かさず投票所に足を運ぶという。

 仕事で成田に来て30年。コロナの前は着陸前の飛行機が何機も上空で待っていて「ゴー」という音がよく聞こえたという。いま、上空を見上げても飛行機の姿はほとんど見られない。「最近は少なくなって寂しいね」

 今の関心はウクライナ。自分の生活まわりのことよりも、防衛問題などが気になるという。「結局は、生活に関わってくるからね」

 日本の空の玄関口、成田空港がある成田市は、成田山新勝寺など昔ながらの門前町で、観光客も多い。しかし、コロナ禍で外国人の数も減り、街は静かな印象だ。成田国際空港会社は今年1月、2021年の国際線旅客数が1978年の開港以来過去最低となったと発表した。

 国際色と伝統的な観光地が共存する成田市で、有権者はなにを考えながら投票所を訪れ、投票のあとはなにをするんだろう。「投票の前と後」を聞いてみたい。期日前投票所に来る人々が、投票を生活の中にどう位置づけているのか、街中にも足を延ばして探っていく。

11:00(石川県珠洲市)

医師と消防士夢見る兄弟連れて投票「夢つなぐ環境へ一票」

 石川県珠洲市の投票所。午前9時すぎ、公務員のアキヒコさん(37)は妻サヤカさん(37)や小学1年生と2年生の兄弟を連れて投票所に向かった。

 子どもが通う小学校のクラスは学年に15人前後。サヤカさんによると、これは「多い方」で、市内には1クラス3~4人の小学校もあるのだという。2020年の国勢調査では、同市の15歳未満の人口構成比は7・2%。アキヒコさんは「いかに、珠洲に人を呼ぶかですよね」と地域振興策を重視する。

 能登半島の先端を指す「奥能登」2市2町には、産婦人科医が1人しか配置されていない。昨年6月には、隣の輪島市で新生児が死亡する医療事故も発生した。サヤカさんは、「体制が整っていないから、ますます子どもが減る」と嘆く。

 今日はこのあと、子どもの皮膚科の通院で、輪島に向かう。珠洲市内には休日に診てもらえる皮膚科がないため、仕方なく遠出するのだという。

 小学2年生の兄は小児科医を、弟は消防隊員を夢見る。弟が救助した患者を兄が助けるのが兄弟の目標なのだという。2人とも地元・珠洲で働きたいと思っている。

 「環境のせいで夢を諦めてほしくない」。両親はそんな願いを一票に込めた。

11:10(沖縄県宮古島市)

東京から1830キロ離れた島で政治家に求めるものは

 沖縄県宮古島市のきょうの気温は31度。島には数々のビーチがあり、青く透明感のある海が特徴的だ。昨年、新庁舎となった宮古島市役所の周囲には、あざやかな黄色の花とともに、投票を促す旗が並ぶ。

 投票所に入っていくひとりの男性に声をかけた。宮古島市のタイラさん(54)。経営する建設会社では、農地整備など公共工事を主にしているという。

 選挙での関心は「沖縄振興一括交付金」についてだ。昨年は予算が減り、公共工事も減ってしまったという。2019年は「宮古島バブル」といわれホテルなどの建設ラッシュとなったが、土木工事なので関係はなかった。農地を整備し収穫時の大型ダンプが入れるようにしたり、排水整備をしたりしている。

 東京から約1830キロ離れた宮古島だが、「政治が自分に直結していると感じている」と話す。「コンクリートから人へ」と主張した民主党政権下では、全く仕事がなかった。仕事があったとしても水準が安くなり、賃金の低さをまかなうため従業員にだしていた賞与も出せない。地元でも閉業する会社もあり、「地獄でした」と振り返る。

 政治家に求めるのは、沖縄県と政府をうまくつないでもらうこと。対立すると予算が取れなくなると不安に思う。米軍基地の問題については、「基地がないことにこしたことはないけど、誰かが負担しないといけないことではあると思う。沖縄が負担しているんだ、ということは政府に伝えて欲しい」と話す。予算がなければ、公共工事以外にも、教育や福祉などにも、全てに影響が出てしまうと感じる。

 陸上自衛隊宮古島駐屯地へのミサイル配備でも反対の声はあがるが、「近所で不審者がでたら、戸締まりだったり、するでしょう」と話す。漁師からは海上保安庁に見守られながら漁をしている話なども聞く。先月にも中国船が近海まできていたことをニュースで知り、不安はぬぐえない。

 「野党がしっかりしてくれれば、沖縄に住む我々のような少数派の意見も取り入れられていくんじゃないか」とも思う。沖縄県では基地問題が争点にもなるが、「まずは生活ができないと」と話す。「ご飯を食べて、教育を受けて、それから平和についても考えられると思う」

11:20(仙台市)

「投票所が遠い、暑い、めんどうくさい」でも、投票するわけは

 東北の中心地・仙台駅前の複合ビル5階。ここに設置された期日前投票所は、店舗オープンと同時に午前10時から開いている。

 「組合の方が積極的に呼びかけていて。投票しないといけなかったんです」

 投票に足を運んだ理由を記者(28)が尋ねると、アキトさん(24)はこう答えた。

 仙台市の会社員。電力系の会社に勤めている。最近は、電力需給の逼迫(ひっぱく)が連日のようにニュースで話題になっている。記者が「頼まれた人に投票するのに違和感はないですか?」と聞くと、「自分の仕事に直結してくれる人ですから。思いっきり価値観が違うなら別ですけど」と淡々と話した。

 毎回必ず選挙に行くわけではないという。この日も電車に乗ってきたことを振り返り、「まず投票所が遠い。暑いですし。めんどくさい」とも。トートバッグから小型扇風機を取り出し、ハンカチで汗をふきながら取材に答えた。

 同世代の投票率が低いのは、「分かります。だいたい投票したい人もいないんじゃないですか。誰を選んでも……ってところが正直あるんじゃないですか」。自分は、比例こそ頼まれた人に入れたものの、選挙区は、複数の質問に答えることでどの政党に考え方がマッチするか教えてくれるサイトで確かめた上で、投票したという。

 この後の予定について尋ねると、「11時からまゆげを整えに行きます」と話し、足早に去っていった。夕方には散髪もする予定だ。

12:00(沖縄県宮古島市)

突然の大雨、いったん取材は一休み 昼食は宮古そばでも

 投票所の入り口を確認できる場所にレンタカーを止め、原稿を書いていると、大雨が降ってきた。フロントガラスは雨でぼやけ、前方が確認できなくなるほどで、上空には分厚い雲が覆っている。

 宮古島気象台のホームページによると、2日は台風4号の影響でにわか雨があるという。

 昼前になると、多少おさまったものの、雨は降り続けている。心なしか投票所への人足も減ってきた気がするが、お昼時だからかも知れない。私も宮古そばでも食べに行こうか。

12:15(石川県珠洲市)

相次ぐ北朝鮮のミサイル発射実験「身近な漁師が心配」

 石川県珠洲市の投票所に来た市内の公務員男性(30)に話しかけた。

 安全保障を重視してニュースサイトや新聞で候補者の政策を見比べてから投票に臨んだという。

 ロシアによるウクライナ侵攻に注目が集まるが、男性は「それもありますけど……」と言葉を続けた。

 珠洲市は能登半島の北端に位置し、北朝鮮とは日本海を挟み、1千キロ弱の場所にある。今年に入ってからも、たびたびミサイルの発射実験が続き、中には日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したものもあった。

 そのニュースに触れる度に、頭をよぎるのが身近な漁師たちの存在だ。男性の妻は港町の出身。友人には、当然漁師もいる。「珠洲は漁業が盛んなので心配。それを守るためにも、日本は国防をしっかり考えないといけない」

12:30(千葉県成田市)

投票行って外食するんだ きょうはラーメン

 千葉県成田市の投票所。

 「家から来ました。投票は義務感でなんとなくかな。このあとはメシ食いに行きます」。短髪にTシャツ姿の息子(19)が父(50)と一緒に出てきた。

 選挙は2回目だという息子。父は「家で暇そうにしてたので一緒に連れてきました。昔から連れていっていたわけではないけど。投票には毎回来ています」。投票先はニュースなどを見て決める。

 このあとは何を食べに行きますか?と聞くと「ラーメン!」と息子が即答。ごく普通の親子の休日に、投票という「用事」が違和感なく入り込んでいた。

12:40(新潟県南魚沼市)

米どころだけど、心配なのは円安や物価高

 米どころだからといって、農業政策だけが争点というわけではない。

 小学2年生の一人娘を連れて投票に来たトモヒロさん(40)は、南魚沼市内の自動車部品などを手がける会社に勤める。「うちは農業をやっていないので、自分たちのこれからの生活に直結する政策を期待してます」

 物価高にあわせて、円安もあって海外から仕入れる原料の価格が高騰している。さらに海外からの発注量も安定せず、不安が大きいという。今はまだ所得への影響はないが、「これから反映されますよね。少しでもよくなって欲しいです」

12:50(兵庫県尼崎市)

「ただの傍観者だけど、ツイッターのトレンドに上がっているから」1票

 投票所の近くで原稿を書いていると、目の前でエレベーターを待っている親子連れの会話から、比例区での立候補が話題になっている「暴露系ユーチューバー」の名前が聞こえてきた。

 生後7カ月の長男をベビーカーに乗せて、夫と投票に来た会社員のユリコさん(34)。近くの家電量販店でオーブントースターを買い直すついでに立ち寄ったという。

 その候補者は、ユーチューブで芸能人らのゴシップを「暴露」する「暴露系ユーチューバー」として知られる。ファンなんですか? と尋ねると、「ファンってこともない、ただの傍観者。ツイッターのトレンドに上がっていることが多くて」と返ってきた。「比例は票の重みがよく分からない。(その人に)入れたのは、ネタです」

 日頃、育児で疲れ切ってテレビを見る時間はない。寝る前にその人の動画を見るのが息抜きだという。「あの人がなにか(政治を)変えることはないだろうけど、面白くなればと思って」

13:00(福岡市)

博多祇園山笠が始まった福岡 沖縄出身記者が「復帰50年」を聞いてみると

 「博多祇園山笠」が1日に始まったばかりの福岡市。投票所のある市役所の前にも、静かなお祭り感が出ていた。

 繁華街・天神の一角にあり、近くには大型商業施設が立ち並ぶ。

 一番乗りで到着したのは南区在住のチヅコさん(82)。69歳まで42年間、看護師として働きながら、20代の頃から欠かさず投票してきたという。どこからその原動力はわき上がるのか。「一票で変わるのかとも思うよ。でも一票投じないと何も始まらないもん。それに自分が投票した人が当選したらうれしいじゃない」

 記者(27)は沖縄出身で、4月に福岡に来たばかり。本土復帰50年を迎えた沖縄についても、どういう風に考えているのかも聞いてみた。

 チヅコさんは、米軍統治下だった1960年代の沖縄に、パスポートを使って訪れた思い出を語り出した。「こんなに基地があるの、とびっくりしたわよ。沖縄だけ、なんでいまだにあんなに基地が多いんだろうね。なくなってほしいけど、どうしたらいいんだろうね」。それまで笑顔で答えていた表情に、少し戸惑いが生まれたような感じがした。「暑いのに大変ね。取材頑張って!」とエールを送り、お中元を買いに市役所近くのデパートへと颯爽(さっそう)と向かっていった。

13:05(愛知県長久手市)

夫は勤務先から投票を依頼され「違和感なくはない」 巨大ショッピングモールで

 お昼前の「イオンモール長久手」の1階のフロアには、パンの焼けるいい香りが漂っていた。

 記者の地元・横須賀にもイオンはあるが、桁違いの大きさだ。約6万平方メートルの売り場面積に、衣料品や飲食店など186店舗。思わず「でかいな」と声が出た。

 正午から、このモールの4階に期日前投票所がオープンした。市としては初めての取り組みで、「買いもの客が多い時間帯をねらい、若い世代の投票を促したい」(市選管担当者)という狙いだ。

 思惑どおりに行くのかと待ち構えていたが、開場から15分ほどで小さな子どもを連れた若い家族連れが続々と投票所の中に入っていく。中には、ベビーカーを押して投票所に入る家族の姿も。

 主婦のマナミさん(35)もその一人。同い年の夫とともにベビーカーを押して投票に訪れた。「子どもが一緒なので暑いのはいやだな、と思って。屋内なら涼しいし、便利ですね」とスムーズに投票を済ませた。

 長久手に若い世代が多い、と伝えると「そうですよね。暮らしやすいですし」とうなずきつつ、「人が増えているのに市役所などの建物が古いまま。前に暮らしていた街はもっときれいだったので、何とかならないですかね」と苦笑いした。

 会社員の夫は、勤務先の関係で投票を依頼されている、と明かした。「違和感は、なくはないですよ。自分の意思での一票ですから」とぽつり。「それでも、納得して投票している人も多いのかな」

 投票に行く意味をマナミさんにたずねた。「選挙に行っても変わらないかもしれない。でも、行かなければ何も変わらない。だったら、一票でも何か変われば、と思いますよね」。何か変われば、何か実現すれば――。市役所でも聞いた言葉だ。その思いに、政治家はこたえられているのだろうか。

13:15(福岡市)

若者に取材したいのに… 焦り始める記者に「初めての投票です」

 投票所には長い列ができている。それなのに、若者の姿は少ない。私は焦り始めていた。

 福岡市によると、市内に住む約162万人のうち、10代・20代の割合は22%で、政令指定都市の中では最も割合が高い。

 人口10万人あたりの大学や短大、高専、専修学校の数が全国21大都市の中で最も多い。「九州各地から学生たちが集まってくるため、東京への人口流出を防げている」(市担当者)という。

 そんな若者の街・福岡に集う10代や20代は、どんな思いで投票しているのか。そんなことを聞きたいと思いながら取材に訪れたのに、やっぱり若い人は来ないのか……。

 そんなとき、若い人の姿がぽつぽつと見え始めた。

 「きょうが初めての投票です」と話したのは、中央区に住むトワさん(19)。アニメが好きで、将来の夢は声優だ。地元の鹿児島から引っ越してきて、4月から福岡市内の芸能関係の専門学校に通っている。「今は奨学金を借りているので、将来の返済を考えると、やっぱり不安になるときもあります。子どもへの支援はある程度は充実していると思うので、5年先、10年先に社会人になる高校生や大学生、専門学生への支援をもっと増やしてほしいです」

 ただ、特定の候補を応援している友人に誘われるまでは、投票に行くつもりはなかったという。「別に行ったところで変わらないんじゃないかと思って。行くきっかけを作ってくれたのが大きかったです。投票はこれからも行きたいです」と話した。

 お昼時になり、だんだんと訪れる人も増え始めてきた。さらに多くの若い人たちに話を聞いてみたい。

13:30(新潟県南魚沼市)

「若年層の投票率を上げる。それだけが目的」 政治家を逃げさせない

 「若年層の投票率を上げる。ただ、それだけが目的で投票に来ました」

 投票を済ませたユウタさん(27)は、そう断言した。

 都内の私立大学に通うために借りた奨学金が今も家計を圧迫する。「若者の投票率が低いと、決まった予算の中から自分たちに分けてもらえるのはわずかな額しかない」。その結果が、奨学金に苦しむ若者の姿だと思っている。

 ユウタさんは、人口の少ない若年層が「投票先で影響を与えられるとは思っていない」という。それでも、「こっちを見てくれないと逃げていくだけだぞ、と政治家に分かってもらいたい」。

 地元育ちではない。相模原市で育ち、3年前に就職して南魚沼市に配属された。

 来てみて、気になったのは公共交通の少なさだ。「地元では電車に乗れば海にも山にもいけた」。それが、南魚沼では車がないとどこにもいけない。引っ越しを機に車を「買わざるを得なかった」。維持費やガソリン代も高い。健康のために乗っている自転車も、豪雪地帯の冬は危険で乗れない。「地方の交通網を発達させる政策が必要だと思う。暮らしやすい町なのに、車が無いと暮らせないなら、あえてここを選ばなくなってしまう」

13:45(仙台市)

取材を断られ続けて出会ったのは旧知の公務員「選挙は勝ち取った権利」

 街に太陽が照りつける昼過ぎ。仙台駅前の複合ビルに入る期日前投票所は閑散としていた。声をかけても、「このあと用事があるから」と応じてもらえないことが続いた。そんな時、目の前に現れたのは、見覚えのある顔だった。公務員のカツヒロさん(59)だ。

 かつて仕事でお世話になった方。いつものスーツ姿に革靴ではなく、エンジ色のTシャツにスニーカー。これまで会うのは庁舎内だった。汗だくの姿を初めて見た。

 「お久しぶりです!」。記者(28)が話しかけるやいなや、「土日なのに、相変わらず仕事熱心で」と声をかけてくれた。記者が「いまの職場はちゃんと土日があるんですね」と返すと、マスク越しにはにかんだ。

 投票に来た理由を尋ねたところ、「国民の『義務』だと思っている。時間をかけて勝ち取った権利なんだから、行かない人の考え方が分からない」と語気を強めた。どんな選挙も、欠かさず投票しているという。「世界中をみれば、国によってはちゃんとした選挙がないんだから」とも言い、記者はうなずくしかなかった。

 今日の予定を尋ねると、「バーゲンが始まってて、妻と服を買いに来た」。仙台市中心部にバスで来て、バーゲンとバーゲンの合間に投票所に立ち寄ったという。「だいたいみんな選挙なんて『ついで』でしょ」と大きく笑った。さっきあれだけ真面目に投票の重要性を語っていたのに。

 最後に、「ところでもう投票は済ませたの? そもそも投票できるの?」と転勤族の記者に逆質問してきた。「ちゃんと仙台市民ですが、まだです。ちゃんと行きます」と答えた。

 エレベーターでバーゲンに戻っていったカツヒロさん、今ごろ、いい服に巡り合えていますか?

14:00(兵庫県尼崎市)

インスタやTikTokを参考に人生初の投票「自分はえらい」

 母親と投票に来た大学2年のカリンさん(19)。きょう、人生初めての投票を済ませた。「自分のことをえらいなと思います」とにっこり。これから一緒にパスタを食べに行くところだという。

 小中学生の頃から「選挙は必ず行くもの」と母に教えられてきた。投票所についていくことも多かった。

 候補者を選ぶときは、インスタグラムやTikTokで流れてくる各党や候補者の投稿も参考にした。投票用紙の書き方を学べるショート動画も見てから来た。

 同年代の友人と選挙や政治について話したことは全くないという。「一人暮らしだったら、どうやって投票したら良いか分からないのでは。携帯で出来るわけでもないし。周りは誰も行かないと思う」

14:05(愛知県長久手市)

初めての一票投じた高校3年生「選ぶとはお願いすること。願い実現して」

 続々と親子連れが訪れる長久手市役所に、高校3年のランさん(18)がやって来た。

 初めての選挙だ。

 一緒に来た母は「私がこの子のぐらいの時って、政治に関心なかったんですよ。でも、この子は自分から行きたいって」。

 ランさんが選挙に行こうと思ったのは、小学6年の時の担任の先生の言葉があったからだ。「自分が住んでるとこの代表を選ぶ選挙は行かなきゃだめだ」と。

 「その言葉がずっと残ってました」とランさん。

 政策や政党について詳しいわけではない。友達と選挙ポスターを見に行って、顔やキャッチフレーズの印象を話したくらい。その印象で、投票先も決めた。「選挙という、初めてのことを一度やってみたかった?」と聞くと、「そうです、そうです」とうなずいた。

 世の中の動きに関心はある。電力が不足していると聞いて、受験勉強中に部屋のエアコンを切ったりもした。

 大学進学を目指しているが、「この先、暮らしていくのにお金は大事」だと思う。「投票して何かが変わるという実感は」と聞くと「わからない。でも、選ぶってことは、その人にお願いすることなんだと思う。だから、願いは実現して欲しい」

15:10(石川県珠洲市)

防災無線で投票呼びかけ 高投票率に貢献?

 「棄権することなく、投票しましょう」

 石川県珠洲市。午前10時と午後3時に市内に設置される全ての防災無線で期日前投票を呼びかけるアナウンスが流れた。期日前の投票期間中は毎日流れるという。珠洲市内の投票率は多くの選挙で7割を超える。高い投票率に防災無線が一役買っているか?

15:20(東京都渋谷区)

投票所前を行き交う着飾った若者4人に声をかけると…

 炎天下にもかかわらず、渋谷区役所に設置された期日前投票所には断続的に区民が投票に訪れている。しかし、見た限り年齢層が高い気がする。

 記者(27)が今回の取材を通じて聞いてみたかったのは、「もしかして、投票所ってダサい――?」。

 だから、若い人を探さねば。

 投票所前の通りにはブランドもののTシャツや色鮮やかなワンピースで着飾った若者が絶えず行き交っている。投票には行かないのだろうか。ちょうど目の前を通りかかった女性4人組に、声をかけてみた。

 「期日前投票は行きますよ」。府中市のヒロさん(25)が笑って答えた。カメラの趣味仲間の集まりで、今日は投票所のとなりにある公園で撮影会をしたという。「ニュースを見ていると、自分も行かなきゃと思うんです」

 舞台俳優をしており、アニメーション制作会社へ転職を考えている。芸能や制作など表現を扱う業界は、他業種と比べて雇用体制や収入が不安定な場合も。自分たちの業界にも目を向けてくれる政治家に国会にいてもらう必要があると考える。

 俳優仲間はコロナ禍で飲食店のアルバイトができなくなり、新しい働き口を見つけられず俳優の夢を諦めた。「税金は高いし年金はもらえないし。資産運用しているけど、政治を変えないと自分たちの世代はこのまま一方的に不利益をこうむるだけ」

 投票すること自体は自分の生活に関わることなので「ダサいとは思わない。けど、独特の雰囲気でなんとなく行きづらさは感じる」。自宅に届いた入場券を受付で渡し、仕切りのあるブースへ。候補者名を書いた用紙を箱に入れたら、同じ作業をもう一度。「投票所の中がどうなっているのかわからないから入りづらいのかも」という言葉に、友人たちもうなずいた。

 横浜市のミズホさん(22)の周りには政治に関心のない同年代もおり、自分の生活と政治のつながりを実感できていないように感じるという。「若者向けの政策ってほとんどないじゃないですか。(街中で)政治家の話を聞いても、自分は対象じゃないからピンとこないし。ちゃんとやってるの? と思っちゃいます」

15:45(仙台市)

「国会議員は民間企業に受からないだろうな。聞かれたことに答えてないから」

 仙台駅前の複合ビルに入る期日前投票所。畳んだ日傘を手に、投票を済ませた仙台市の大学院生、ユウカさん(22)に声をかけた。

 理系の研究をしていて、投票後は大学のキャンパスに向かうという。選挙では、研究対象の環境問題が話題にならないことを気にしている。「国会議員は今の世の中が良くなることばかりを考えている気がする。どうせ自分はいなくなると思って、国の将来、人口減少などをメインに考えているとは思えない」

 現在、就職活動中だ。面接では、「聞かれたことに具体的に受け答えができるかが大事だ」と考えている。だからこそ、「ニュースを見ていると、国会議員は民間企業に受からないだろうなと思う。答えになっていないことが多い」と笑った。

 身近な友人たちはニュースを見ていないようだし、政治の話もしない。それでも自身は、選挙権を得てからはいつも投票するようにしてきた。「親が政治に関心があって、自分も来るのは当たり前」。ただ、「自分の1票で世の中が良くなったと感じたことはない。政治が直接的に自分の生活に影響する感じはしない」と言う。

 そこで、記者(28)が「それでも投票に行くのはなぜですか?」と尋ねると、「行っていいことは無くても、それが行かない理由にはならない。プラスの可能性がある限り、マイナスにはならないかなって」と答えた。

 「たしかに」とだけ、記者は答えた。なかなか次の質問を投げかけられなかった。

15:55(千葉県成田市)

新勝寺参道にあるうなぎ屋女将が語る願いは「無駄遣いなくして」

 暑い。午後になると、成田市は34度まで気温が上がった。遅めのお昼を食べようと、市役所からいったん離れて徒歩10分程度のところにある成田山新勝寺の参道に来た。

 新勝寺の門前町にはかつて参拝に訪れる人々が泊まった旅人宿の面影を残したうなぎ屋がいくつも並ぶ。

 記者(23)が立ち寄ったのは、江戸時代から続くという「近江屋」。27歳で結婚して以来、この店で働き続けてきたという女将(79)とお話しした。

 「成田闘争のときには、機動隊がうちに泊まったこともある」。52年間、この場所で商売を続け、ここ数年はコロナ禍での客足減にも苦しんだ。「腰も痛くて大変なんだけど、できる範囲でね」と熱気が漂う店先で、汗をにじませながら接客を行う。

 物価高でうなぎの値段もあがっているが、品書きの値段は変えない。「『元気でよかった』と再び来店してくれるお客さんのおかげで頑張れる」からだ。

 店先で話をしていると、選挙カーが参道を走り抜けていった。ずっとお店に立っているのに、どうやって投票に行くのだろう。聞くと、期日前投票を利用することもあるが「だいたいは投開票日の当日にね」という。「夜8時までやっているから、仕事のあとに友だちと行くことが多い」と話してくれた。

 気になっている政策を聞くと、「正直、期待していないんだけどね」という言葉とともに、こんな答えがかえってきた。「とにかく国会議員の数が多すぎる。政策をどうしてほしいというより、議員の数を減らして税金の無駄遣いをしないことを望みます」

16:05(福岡市)

「どうせ勝つでしょ」「良いとも思わないが…」交錯するそれぞれの思い

 福岡市役所には昼時を過ぎてもなお、投票をするために多くの市民が訪れていた。時折、若者の姿も見られた。何人かに声をかけてみた。

 「歯医者のついでに来ました」と話したのは、南区に住むシステムエンジニアのマナエさん(26)。20歳のころから毎回投票には足を運ぶ。「私の1票だけで世の中が変わるとは思っていません。でも、自分たちが生きていくために意見を出さないといけないと思っているんで」と投票の意義を語る。

 私の出身である沖縄についても尋ねた。「小中学校の授業で、福岡大空襲と共に沖縄戦は学びました。でも、基地問題については何と言えばいいか分からないです。難しいですね」

 25歳と21歳の姉妹は、共通の地元の先輩に「応援してね」と頼まれた候補者に一票を投じた。2人ともきょうが初めての投票。「めんどくさいですもんね。きっかけがないとなかなかね」と苦笑した。

 薄緑色のセットアップをビシッと着こなしていた会社員男性(25)は「どうせ自民が勝つでしょ」とぼそり。それでも「だからこそほかの党に入れました。消費税も下がってほしい。若い人たち向けの政策も増やしてほしい」と注文もつけた。

 一方、事務職の女性(27)は比例で自民を選択。「野党があまりにもイメージがよくない。自民がいいとも思わないが、消極的に選びました」とぽつり。「『経済的に産めない』という友人もいる。出産や子育て政策をもっと拡充して」と要望した。

16:15(愛知県長久手市)

生年月日を尋ねた記者に「きょう22歳に」。初めての投票「ちょっと違う誕生日」

 記者(27)はイオンモール長久手のフードコートで遅めの昼食を済ませ、投票所に戻ってきた。正午に受け付けが始まった投票所。男性職員に確認すると、午後2時の段階で約150人が投票に来たそうだ。「正午から午後6時で300人くらいと見積もっていたので、このままいけば想定を超えそう」と上々のようだ。

 そんな中、大学4年のユウコさん(22)が訪れた。「投票に来るのは今日が初めて。ちょっと緊張しました」と笑った。

 大学のゼミの影響もあって、政治に関心がわき始めている。親から「そろそろ行ったら?」と勧められたこともあり、初めて投票することにしたという。「女性活躍、ジェンダー平等を重視している候補者を選びました」

 日本はそうした政策をさらに進めた方がいいか、と尋ねると「進めた方がいい。『男性だからこうだよね』『女性ならこれできるよね』という性別による先入観を無くして、みんなが活躍できる社会がいい」。

 ニュースを見る機会はあまりない。「若者が見る番組の中で政治や選挙を扱ってくれれば、関心が持てるのでは」。今回、候補者の公約はネットで調べたという。

 大学進学を機に九州から長久手に引っ越してきた。地方出身者ということでさらに尋ねた。長久手って若者が多いらしいけど、暮らしやすい? そう聞くと「都会と田舎がちょうどよくまとまっていて、一人暮らしの学生向けにお米券を配布してくれたりもして、いい街です」と話した。

 取材の最後に、新聞記者が聞き忘れてはいけないことがある。生年月日の確認だ。年齢だけお聞きしたのでは、もしかしたら紙面に載る時には変わっているかもしれない。だから、ユウコさんにも聞いた。すると……。

 「実はきょう、22歳になったんです。選挙を特に意識したわけではないけど、でも、いつもとちょっと違う誕生日にはなったかな」

16:30(沖縄県宮古島市)

「投票したって観光客のマナーは変わらないでしょ」に返す言葉なく

 宮古そばを食べに行こうと車を走らせる。昼過ぎ、お目当ての店の前には20人以上の客が並んでいた。駐車場をみると、レンタカーを示す「わ」と「れ」のナンバーが20台ほど。新型コロナウイルスの影響で落ち込んでいた観光客が戻ってきているのかもしれない。

 宮古島市のホームページによると、2013年には観光客数が40万人だったが、18年には100万人を超えた。シンクタンクのりゅうぎん総合研究所の武田智夫常務は「15年の伊良部大橋開通などで観光客の受け入れ態勢が整っていった」と話す。

 お目当てのお店は諦め、昨日も行った店に入る。従業員の女性(50代)に観光客が増えてよかったことや困ったことを尋ねると、ふと口をつぐんだ。

 沈黙の後で「騒いだり、散らかしていったりする人はいるよね」。ぽつりぽつりと話し始めた。客とのトラブルで警察を呼んだことも数回ある。「一部の人だとは分かってるんだけど、マナーを守って欲しいよね」

 そこで、選挙についても尋ねると、「投票には行かないかもしれない」という。候補者についても「興味がない」。困りごとを解決できるかもしれないのに……と思ったが、「投票したって、観光客のマナーは変わらないでしょ?」と笑われた。

 返す言葉を思いつかなかった。楽しみは、仕事終わりに友人とカラオケでストレス発散することだという。

16:45(福岡市)

「あなた何やっているの」逆取材にドキッ 選挙への熱量に圧倒される

 朝から福岡市役所で、若者を中心に、有権者に向けた取材を続けている私。ひととおり話を聞き終え、市役所のカフェスペースでパソコンを開いて原稿にまとめていた。

 「あなたさっきからいろんな人たちに声かけてるけど、何やってるの」。背後から女性(73)に“逆取材”された。ドキッとした。いやでも、ちゃんと市役所には許可は取っているから、ちゃんと企画の趣旨を話せば大丈夫だ……。少し緊張した自分を落ち着かせ、女性に説明する。女性は興味深そうに私の話を聞いていた。

 話を聞いた女性は「そういえばあなたは投票に行ったの?」と私に尋ねた。「それがまだ行けていなくて。早めに行きます」と答えると、女性は自身が推す政党の魅力を熱弁した。「公約の実行率は各党の中でもナンバーワン。記者なら良さが分かるでしょ。夕方から演説会も近くの公園であるから来てね」。そうPRした後、手を振って市役所を後にした。選挙への熱量を感じた。

16:55(新潟県南魚沼市)

「豪雪対策に人手足りず」田中角栄元首相のおひざもとで聞いた嘆き

 新潟県南魚沼市のJR上越新幹線浦佐駅前には、田中角栄元首相の銅像が立つ。そんな田中氏らが議員立法で成立させた「豪雪地帯対策特別措置法」で「特別豪雪地帯」に指定されている同市は、多いときで3メートル近く雪が積もる。

 この地域では雪の季節、屋根に上って雪下ろしをしている人の姿が風物詩となる。

 マナブさん(76)も昨年までは、雪下ろしに精を出した。だが、昨夏、肺がんのステージ4と診断され、鼻につけた酸素の吸入器を常に携帯するように。雪下ろしもできなくなった。近所に住む娘夫婦が身の回りの世話をしてくれるため日常生活に不自由はないが、「雪の季節は大変なんですよ」。

 屋根に取り付けた融雪機の電気代は1シーズンで20万円以上。暖房に使う灯油の量も「ばかにならない」上、価格も高騰している。「冬は畑も使えなくなる地域で、除雪機は数十万、数百万の時代。雪国の宿命と割り切ったらそれまでだが、高額医療費のように、国の補助があればいいんだけどねえ」

 近所の高齢者世帯の除雪を手伝うなど地域で支え合ってきたが、人口減少で「人手が足りなくなっている」。雪国の生活環境を向上させてくれる政策を期待している。

17:05(福岡市)

「選挙はこういうものだよ」2人の孫たちに見せたくて

 福岡市役所で、有権者への取材を続けている私。小さな子ども2人を連れて投票箱に向かう白髪の男性を見かけた。気になって声をかけてみる。

 「選挙はこういうものだよ、というのを孫たちに見せたくて」。早良区のコウイチさん(61)はそんな思いから11歳の姉と8歳の弟の孫2人と共に投票所に行ったという。姉は「自分も投票してみたい」と笑顔を浮かべる。

 「娘は全然選挙行かんけん、無理やり連れてきました」とコウイチさんが指さす先で苦笑いするのは34歳の娘さん。実に3年ぶりの投票だ。だが、投票はかなわなかったという。「下関から最近福岡に戻ったので、住民票の関係で福岡には投票できませんでした。知らなかったです。不在者投票もありますが、手続きが面倒くさい。もっと気軽に投票できるようになってほしい」

17:15(愛知県長久手市)

「居眠り議員みると選挙に行く気なくなる」大学生のぼやきと注文

 午後4時を過ぎて、制服姿の男女も多く行き交うようになってきたイオンモール長久手。投票所のすぐそばにある映画館のビジョンには、記者もこないだ見たばかりのアメリカ映画の宣伝映像が流れている。

 チケットは残りわずかのようだ。靴屋や衣料品店には若者がひっきりなしに出入りし、にぎわいのある午後だ。

 買い物中という大学2年生、コウスケさん(19)に声をかけた。すぐそこに投票所があるんですけど、と指をさすと、会場の方をちらりと見て「へえ、そうなんですか。でも僕、住民票を移していないんで、投票できないんですよ」と続けた。

 もし住民票がこっちにあって、こういうショッピングモールに投票所があったら行きますか、と聞いた。「どうですかね。誰を選んでも同じっすよ。正直」。興味なさげに話した。「SNSとかで居眠りしている国会議員の画像とか流れてくるんですよね。ああいうの見ると、選挙に行く気がなくなります」

 選挙に行ったことがないわけではない。北陸にある地元の市長選には親に連れられて行った。でも、国政選挙には関心が向かない。「居眠りしてないで、円安とかどうにかして下さいよ。バイトもしてるけど、支出が増えている。肉とかどんどん値上がりしてますし、アップルウォッチも値上がりして買うのをためらっている」。そう注文をつけ、モールの雑踏へと去っていった。

17:20(石川県珠洲市)

「職場の先輩に怒られてね」一回も棄権したことがない男性を変えた一言

 若者の投票率が低い――。記者(25)の世代は、常に周りからそう言われ続けてきた。そうは言っても、誰に投票すれば……。詳しくない自分なんかが投票していいのだろうか。つい、いらぬ遠慮をしてしまうのは私だけではないはずだ。

 昔はどうだったのだろうか。投票に訪れた石川県珠洲市のテツオさん(79)は、「今までに一回も棄権したことがない」と胸を張った。やっぱり、昔の若者は政治への意識が高かったのか。ちょっとがっかりしつつ、初めて投票した時のことを尋ねた。

 「実は、職場の先輩に怒られてね」。返ってきたのは意外な言葉だった。

 テツオさんが20代のころ、初めて投票権を得た選挙を迎えた。翌日に投票日を控えても投票する気はなかったのだという。

 「興味もなかったし、誰に入れればいいかわからんかった」

 だから、就職先の地元の漁業協同組合の事務所で、投票する気がないことを同僚に話していた。すると、話を聞きつけた先輩の一人が声をかけてきた。

 「誰に入れればいいのか、分からんでも、行ってこい」

 教員をやめ、漁協で働くその先輩は怒るわけでもなく、冷静にテツオさんを諭した。

 「国民に与えられた権利は放棄するな」

 テツオさんは誰に投票するかを決めるため、必死に情報を集めた。

 当時はもちろんスマホなどない。候補者のポスターを眺め、新聞を読み、同僚にも選挙の話題を振ってみた。

 あれから60年。漁業に関心を持つ候補者を全力で応援し、選挙結果に一喜一憂してきた。自分の一票でどう世の中が変わったのかは、分からない。でも、「無駄なことでは、なかった」と思っている。

17:35(兵庫県尼崎市)

高校中退し町工場で働いた青年「中小企業守って」弟誘って投票

 中高年が目立つ昼下がりの投票所に若い男性2人組が現れた。とっさに取材を申し込むと、「いいっすよ」と快く応じてくれた。

 尼崎市在住の会社員ナオトさん(29)は、Tシャツにジーンズのラフな服装。投票は21歳のときから必ず行っている。弟(26)をいつも誘っているという。

 投票に来る理由を尋ねると、間髪入れず「労働者を守る候補を出したい」。

 「いまの政治は大企業を優遇している。中小企業で汗水流して働く人が報われるようにしたい」

 高校を中退し、16歳から市内の町工場で働き始めた。従業員30人ほどの小さな会社。景気の悪化で経営が傾き、休業を迫られたこともあった。労働者と雇用者、双方を守る様々な制度のおかげでなんとか生活できた。この経験から政策の重要性を強く感じるようになったという。

 周りを見渡せば、大企業からの値下げ圧力で原材料高を価格に転嫁できず、板挟みになっている中小企業が多いと感じる。「過度な値下げ圧力から中小企業を守るため、野党には頑張ってほしい。だけど、いまのように分裂している状況では難しいのかな」と顔を曇らせた。

17:55(仙台市)

中型バイクで投票へ 「ポジティブに、楽しんで選挙に行けるように」

 仙台駅前の複合ビルにある期日前投票所。夕方になっても外はとても暑い。そこに、長袖長ズボンで、ブーツを履いた男性がやって来た。

 声をかけた。「暑くないですか?」

 聞けば、中型バイクに乗って来たという。仙台市の会社員、カズヤさん(25)だ。「もちろん暑いっすよ。でも走れば風を感じられて気持ちいいから」

 暑い中、バイクを使ったのは「ポジティブに、楽しんで選挙に行けるように。選挙はいいイベントとして捉えています」。同世代の投票率は低いが、「ネット投票を早くできるようにすれば、家でもできるなら、と投票する人が増えると思います」と話した。

 普段はエンタメ業界で働いている。コロナ禍でライブなどのイベントが大幅に減った。バイクの免許を取ったのも、仕事が減って時間が出来た時期だった。

 今回は、業界が盛り上がるように「経済の活性化」を願って投票したという。「いまの政治がいいとは思っていない」

 写真を撮り、取材のお礼を伝えると、「帰りはおいしいものでも食べようかな。肉系、行きたいな。魚よりは」。そう言って、バイクにまたがり、さわやかに去っていった。

18:10(東京都渋谷区)

「自分の1票が持つ力、わかっていないのでは」大学教員の学生への思い

 日が陰りようやく涼しくなってきたころ、大学教員のアイコさん(65)が投票に訪れた。10日に仕事が入りそうになったため、今日来ることにしたのだという。

 大学で看護を教える。選挙が近づく度に「投票には必ず行って」と学生に伝えているが、関心を示さない人もいるという。

 「看護師の労働環境を整えるのにも政治の力が必要。自分の1票が持つ力をまだわかっていないのでは」。渋谷に住んで二十余年。選挙は毎回投票へ行く。結果に関わらず、意思表示をすることが大切だと思う。民意で政治が変わると実感したことがあるからだ。

 そんなアイコさんに、記者(27)は恐縮しつつ、私が今日一日、もやもやしていることを聞いてみた。「投票することはダサいと思いますか」

 アイコさんは少し考えて、「街中から外れた区役所より、ターミナル駅に直結しているような便利で楽しいところの方が足を運びたくなるでしょうね」。渋谷駅直結の商業施設「渋谷ヒカリエ」や、若者に人気の宮下公園などを投票所にすれば、若い世代の投票率も上がるのでは……。「ちょっとしたことで投票へ行こうと思えるようになるんです。きっと」

18:20(沖縄県宮古島市)

台湾有事となれば「いつ島が巻き込まれてもおかしくない」

 期日前投票所も、夕方になると人数が減ってきた。母と娘の2人組が来たので声をかけた。「今日はなんで選挙に来られたんですか?」

 母親のミユキさん(57)は「選挙は絶対にいきます。1票でも大事だなぁと思いますよ」と語気を強めた。出産や子育てで行けなかったとき以外は必ず投票してきたという。投開票日当日は仕事があるため、娘を誘って期日前にきた。

 ニュースはテレビや新聞、ネットでチェックしているという。一番の関心事は、島の安心や安全に関することだ。ロシアがウクライナに侵攻し、日々戦争のニュースが流れてくる。台湾有事となれば、「いつ島が巻き込まれてもおかしくない。怖いです。自衛隊は本当に守ってくれるの?私たちじゃ何もできないよ」。有事の際は、島からどう避難するのか。疑問は残ったままだ。

 投票にかける思いは熱い。「議員が地元の住民のことを考えて、自分たちの声を届けて欲しい。私の声は届きませんから」と一票に思いを託している。

18:35(新潟県南魚沼市)

朝からずっと一緒の出口調査員 暑さもなんのその

 午後5時を過ぎると、投票所のある南魚沼市役所への出入りはいっそう少なくなった。

 市役所のベンチに座ってぼーっとしていると、他のメディアの出口調査をしている年配の男性から「この時間からは一気に人が減りますよ」と声をかけられた。この男性と私は、考えてみれば朝からずっと一緒だ。

 聞けば、男性は選挙のたびに出口調査の仕事をしているのだという。

 「選挙行きました?」。私が尋ねると、「まだなんですよ」。10日の投開票日も調査があるといい、それまでに休みは1日だけらしい。

 「毎日遅くまで調査があるんで、その日に行かないと投票できなくなっちゃいますねえ」。暑さで疲労困憊(こんぱい)の記者に、さわやかな笑顔で話す男性がたくましかった。

18:40(愛知県長久手市)

モールは6時間で303人 想定上回る投票者、最後まで人波途切れず

 「ピッ、ピッ、ピッ、ポーン」。時報の音が午後6時を示すと、イオンモール長久手4階の期日前投票所の扉がすぐに閉められた。閉場3分前に来た人もいたが、なんとかぎりぎりで投票を終えて去っていった。この日、イオンモールで投票した人の数は6時間で303人。想定をわずかに上回った。

 「役所には行きにくいけどショッピングモールなら、という気軽さも大きな要因になったのでは」と担当職員は分析した。

 閉場まで30分を切っても、子ども連れの家族はひっきりなしに投票に訪れた。ベビーカーを押して訪れたヨウスケさん(30)とノゾミさん(30)夫妻も、そうだった。

 選挙には毎回足を運ぶ。「若い世代の声を少しでも届けたい」というノゾミさんに対し、ヨウスケさんは「僕はどちらかというと義務感というかあまり期待はしていない」と笑った。これから買い物をして帰るといい、イオンモールの投票所は「市役所に行くよりも使いやすい」と声をそろえた。

 ヨウスケさんの関心事は「減税」。ちょうど家を購入したばかり。「8%や5%だったら、もっと負担も軽いんですが」とぽつり。ノゾミさんは「やはり子育ての政策は大事です」と話した。

 なぜ、長久手市の人口が増えているか。ヨウスケさんは「働き手が県外からやってくるんですよ。メーカーがたくさんあるので、若い人も増える」と説明。ノゾミさんが続けた。「子どもの医療費が高校まで無料なんですよ。すごい助かっています」

 記者の地元・横須賀にも大手自動車メーカーの工場がある。働き手はいるはずだが、人口は増えていない。もちろん単純に2市を比較することは無理な話だ。でも、政策によって暮らしやすい街をつくり、人を呼び込む余地は、まだまだ残されているのかもしれない。

19:00(千葉県成田市)

「政治をあーだこーだ話す」母娘、望むのは「少しでも良い政治家送ること」

 「選挙は行くもの、っていうのは2人の総意。このあとはスーパーで食料品を買って帰ります」。ビジネスホテルで働くミエコさん(32)は母親のカズコさん(75)と投票に来た。来週は仕事で来られず、足の悪いカズコさんを一緒に車で連れてきたという。

 「政治家は慢心になっちゃうとだめ。謙虚さがないと」。そう語気を強めるカズコさんにミエコさんもうなずく。

 普段の食卓でも政治の話をするか、と聞くと「テレビがついているからそれを見ながらあーだこーだ言ってね。結構話してますよ」との答え。カズコさんは連日ウクライナで子どもたちが亡くなるニュースを見ては胸を痛めているという。

 投票は義務だとは思わないという。2人にとって投票は「少しでも良い政治家を送りたい」という思いの方が強い。小さい子どもから高齢者まで安心できる福祉を実現してくれそうな人に入れる、というカズコさん。その思いはミエコさんにも伝わっている。

 夕飯のメニューは?と聞くと「うーん、それはまだ決めていないです」と2人で苦笑い。今日の献立もふたりであーだこーだ、と話しながら決めるのだろう。

19:10(福岡市)

天神の屋台街に足を伸ばすと 一人ひとりに1票への思い

 期日前投票所のある福岡市役所から数分歩くと、天神の屋台街がある。夕方になったので、出かけてみた。

 「投票は欠かしたことない。投票に行かんと政治に何も言えんよ」。そう語るのは屋台「なかちゃん」を営むヨウイチさん(59)。開店準備で汗を流す数百メートル先では、選挙応援に来た政党幹部が声を張り上げていた。

 新型コロナ禍で大きなあおりを受けた飲食店。ヨウイチさんもその一人だ。「コロナで『飲食店は悪』みたいなイメージがついてしまった。政治が与えた影響も少なからずあったと思う。飲食店を敵のように見る社会には、もうなってほしくない」。休業している間は、国から補助も出たが、税金も思ったより多くとられた。

 「今思うと、休業しないで普通に営業させてもらっていたほうがよかったかな」。

 屋台の客は、選挙の話をしているのだろうか。

 「いやー、『今度選挙あるよね』ぐらいですかね。誰々がいい、悪いという話は気まずいもんね」。多くの縁が生まれる場所、屋台。そこでは選挙の話はしないのが、「配慮」ということなのだろうか。

 午後7時、福岡市役所に戻って、期日前投票所が閉じるのを見届けた。今回、若者を中心に、福岡市民の選挙に対するさまざまな思いに触れた。「友達に誘われた」「先輩に頼まれて」――。投票するきっかけを他の人から与えられたという人たちが意外に多かったことも、個人的には興味深かった。どの候補者や政党に投票しようと、1票を投じることに意味がある。今回出会った有権者たちの選択を心から尊重したい。そして、私も早く投票に行こうと思う。

19:15(沖縄県宮古島市)

「娘のためにも貯金していかなきゃなあ」物価高でマイホーム価格も高騰

 宮古島市役所内にある期日前投票所は終日静かだった。まばらに訪れる有権者を案内する声が聞こえるほかは、電光掲示板の音声か記者(24)がパソコンを打つ音だけが室内に静かに響く。

 原稿執筆に夢中になっていると、珍しくにぎわいが広がった。何かとのぞいてみると、よちよち歩きの女の子が投票所に現れ、選挙事務に携わる人たちの人気者になっていた。

 「お兄さんにバイバイしてね」。たどたどしく歩く娘(1)の様子を見守りながら投票所を後にしようとしていた男性に声をかけた。

 宮古島出身で公務員のマコトさん(45)は専門学校への進学でいったん島を離れ、その後は、沖縄本島で物件の立ち退き補償に関する仕事をしていた。10年前から宮古島に戻り、学校の建設や体育館の屋根の修繕などの予算を組む仕事をしている。

 仕事を通じて感じるのは、コンクリートや砂など建築資材物価の高騰だ。マイホームも建築中で費用は約3700万円かかる。10年前だったら、半額ほどでもおかしくないという。「物価だけが上がって、人件費がそのままだと厳しいです」

 「娘のためにも、これから貯金をしていかなきゃなぁ。経済が回って賃金も上がってくれれば」。願いを込めて1票を投じたという。

19:20(東京都渋谷区)

投票所を離れてハチ公前に行くと候補者が「舌戦」

 日が暮れだし、期日前投票に訪れる人も減ってきたため、投票所前の坂をハチ公前まで下ってみた。

 「国会に必要な人物なんです!」

 候補者の車の上から、応援に駆けつけた人が声を張り上げていた。土曜の夜の広場は帰路を急ぐ人や待ち合わせの人であふれ、まっすぐ歩けないほど。そこに、別々の陣営の車が目視しただけでも3台とまり、広場のあちこちで候補者が声をあげていた。ときどき、更に別の陣営の車が交差点を通過していく。

 街頭演説の聴衆のなかには、制服姿や20代前半くらいの若者の姿もある。若者の投票率が低いといわれているが、政治への関心は意外と高いのだろうか。聴衆の最後列で写真を撮っていた大学2年のショウキさん(19)に声をかけてみた。

 「候補者の演説を聞くのは生まれて初めてっす」。公示日以前から、テレビで見かけた顔だったので興味本位で足をとめた。ビラをもらったが、読んではいない。「興味ないんで」。兵庫県生まれで、住民票を移していないため投票は行かない。

 大学生の彼なら、記者(27)の疑問に答えてくれるかもしれない。投票に行かないのは、やっぱりカッコよくないからですか――?

 「いや、普通に面倒なだけっす」。竹を割ったような回答。

 「投票したことないんで、投票所でなにをするのかわからない。すぐ終わるかもわからないので行く気が起きません」。そんなことを話しているうちに、待ち合わせていたショウキさんの友達が到着し、5人で夜のセンター街へ消えていった。

19:25(仙台市)

あなたの「推し」猫は?「にゃん議員総選挙」も開催中

 5階に期日前投票所がある仙台駅前の複合ビル。その2階では、別の「選挙」が開かれている。その名も「にゃん議員総選挙」。宮城県選挙管理委員会が行っている。

 3匹の猫から「推し」の1匹を選ぶ。立候補しているのは「おひるねだいすき党」のみーちゃんと、「おさかなぱくぱく党」のやんちゃん、それから「にくきゅうぷにぷに党」のぎんちゃんだ。「人間がネコをなで過ぎ問題」など三つの課題について、それぞれマニフェストを掲げている。

 仙台市の高校1年生のレオナさん(15)は、「ぎんちゃん」に投票したと教えてくれた。学校での模試終わりに、たまたま父母と通りがかった。「マニフェストがそれぞれ違って、みんなステキ。悩みました」と振り返る。選択的夫婦別姓をめぐる問題に関心があり、「政治に参加したい気持ちがあります」という。「選挙権を手に入れたら、投票に行きたい」

 選管の狙いは、選挙に親しんでもらうこと。担当者は「狙い通り、若い方が多い。この模擬投票が実際の選挙につながれば」と話す。3匹の猫たちの「選挙戦」は、あす3日まで。ウェブでも投票でき、結果は9日に発表される。

19:55(新潟県南魚沼市)

「人類や地球の存続を危ぶませる」と原発再稼働に反対

 夕方以降、まばらに投票所を訪れる有権者はみな、家路を急ぐのか、投票を終えると足早に立ち去っていった。

 立ち止まってくれた建設会社役員のヒデオさん(80)は、南魚沼市から約50キロ離れた東京電力柏崎刈羽原発を「再稼働させない」との政策を打ち出している候補に投票したという。「山や田んぼに囲まれたふるさとだけでなく、人類や地球の存続を危ぶませる原発には賛成できない」

 午後7時半ごろに来た男女を最後に、投票所を訪れる人はいなかった。午後8時、投票が締め切られた。玄関に出てきた市選挙管理委員会の職員に「今日は1日お世話になりました」と告げると、「暑い中、お疲れ様でした」とねぎらってくれた。

20:15(石川県珠洲市)

数十年後、どうすればこの街を残せるか 「私には分からん、あんたはどう思う?」

 青々と輝いていた海に、西日が差し込んでいた。89歳の女性が電動自転車で投票所にやってきた。

 女性は94歳の夫と二人暮らし。子どもたちは皆独立し、金沢や東京などで暮らす。8人のひ孫が定期的に珠洲を訪れ、「遊び相手をするのも大変」と笑う。

 日課は地元紙の誕生欄をチェックすること。「昔は多かったのに。最近は全然生まれていないな」と感じる。このままでは、街がなくなってしまうのではないかと危機感を抱く。「珠洲におっても、ここぐらいしか働くとこ、ないがいね」。市役所を指さしながら、苦笑いした。

 所有している山は、台風で木が倒れた。だが、後継者はおらず、管理のしようがない。夫婦ともに車は持たず、夫はバイクで、女性は自転車で移動する。最寄りのスーパーまでは1キロほど離れている。

 どうやったら数十年後に、この街を残していけますかね。

 最後に尋ねてみた。

 「私にはわからん。あんたはどう思う?」

 すぐに、言葉は見つからなかった。

 女性になんと返せばよかったのか。取材を終え、考え込んでいるうちに午後8時を過ぎた。投票の受付が締め切られ、職員は市役所を後にしていた。

20:25(千葉県成田市)

ベトナム料理店主 選挙権はないが「住民税が高い」

 午後8時に期日前投票が終了したので、成田市役所を離れた。少し歩くと、ベトナム料理店を見つけた。成田市には、多くの外国人が住んでいる。選挙権を持たない人たちは、どんな気持ちでこの選挙を見ているのだろう。

 中に入ってオーナーのヴォさん(31)に話を聞くことにした。

 2015年に来日したのは、「日本なら、お給料がいいかなと思ったから」だったという。空港が近いことから、成田に住み、日本語を学び専門学校に通った。アルバイトなどで働いて料理を学び、昨年自分の店をオープンした。最近では、このあたりにも中国人やほかのベトナム人が増えてきたという。「お店はこれから5年、10年と続けたい」という目標がある。

 実は来週、選挙があるんだけれど……と話を振ってみると、ヴォさんは、あいまいな表情を浮かべた。ヴォさんら外国籍の人には選挙権はない。困っていることを聞くと、「住民税が高い」などと話してくれたが、一票を託すことはできない。

20:35(兵庫県尼崎市)

「情報源はSNS」政治と若者の距離、縮めていくツールとして注目

 投票に行く若者は「意識が高い」人ばかりなのか――。きょうの取材を始める前、自分なりの問いを立てた。

 この日、じっくりと話を聞けた若者は4人。母数としては少ないが、私の受けた印象では、政治に強い関心がある意識が高い人と、政治への関心が薄い人が半々だった。印象的だったのは、政治への関心が薄いと感じた2人が、どちらも投票先を選ぶときに頼る情報源としてSNSを挙げたことだ。

 ある女子大学生は、インスタグラムやTikTokを参考にしたと言っていた。もし私が、SNSの情報だけで投票先を選ぶように求められれば、かなり戸惑うだろう。党や候補者からの投稿だけを見て判断したとすれば、批判的な視点を持つことが難しくなるのでは、と少し不安も感じた。

 ただ、SNSを自在に使いこなすZ世代にとって、政治への入り口は当然SNSにある。そうであるならば、政治を意識が高い人だけの専有物にしないためにも、政治と若者の距離を縮めていくツールとして、SNSをどう使うかが問われている。

 参院選の投開票日まで残り8日。これまであまり気にしてこなかった各党のSNS戦略にも、注目して取材を進めたいと思う。

20:50(仙台市)

あと数秒で間に合わなかった女性「投票しなきゃもったいない。また別の日に」

 仙台市のNPO法人職員、マイコさん(35)は仕事を終え、急いで仙台駅前の複合ビル5階に向かっていた。期日前投票をするためだ。だがエレベーターが開く直前に、ちょうど午後8時を迎えた。

 聞こえてきたのは、職員の「あと数秒でしたね」との言葉。投票は出来なかった。

 降りたばかりのエレベーターに再び乗ろうとするマイコさん。記者(28)が声をかけると、「ギリギリ間に合うかなと思いながら、来ました。切ないけど、しょうがない。職員の皆さんも帰らないといけないから。もう帰ります」と話した。

 記者は悲しくなった。「せっかく来たんだから、数秒くらい許してあげればいいのに」と怒りたくもなった。冷静なマイコさんに、「ギリギリ」と分かっていても投票所に足を運んだ理由を尋ねた。すると、中高時代に女性の参政権獲得の歴史を習ったことを挙げ、「投票しなきゃもったいないと思って、選挙は基本的に来ています」と言った。

 普段、留学支援の仕事に就いている。最近は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、「日本がなるべく他国との関係を良く保ってほしい」とより考えるようになった。身近なところでは、「おいっ子やめいっ子がずっと健やかに過ごしてほしい」とも。

 それなのに、今日を逃したマイコさんは今回投票できないかもしれないのではないか。不安になって、おそるおそる「明日とかまた来ますか?」と聞くと、マイコさんは「明日はちょっと来られないので、また別の日で」と答えてくれた。ホッとした。

 最後に「せっかくなので」と写真を撮らせてもらった。期日前投票所の看板の前で、マイコさんは「投票していないのに」と笑っていた。そして、すっかり暗くなった仙台の街を歩いていった。

 この期日前投票所が開く午前10時から10時間、その出入り口付近から投票に来る人たちを眺め続けた。「なぜ投票に来たんですか」、「今日はどんな一日ですか」。取材を断られることの方が多かったけれど、できるだけたくさんの人に問いかけた。だれ一人、同じ答えを持っている人はいなかった。最後の最後に、投票したかったのにできなかった人にまさか出会うなど、全然思ってもいなかった。

 現場に足を運んで、一人ひとりの多様な声に丹念に耳を傾けることをやめてはいけないと感じた一日だった。お忙しい中で話を聞かせてくださった皆さん、本当にありがとうございました。またお会いしましょう!

21:15(沖縄県宮古島市)

ようやく出会えた同世代 沖縄から見える政治 考えるヒント聞けた

 別の取材で3日前から宮古島に来ている。取材の合間に見たビーチは青く透き通っており、いまにも泳ぎだしたくなった。同時に発展する観光業の影や台湾有事への危機感などの声も聞こえた。

 変わりゆく宮古島で、記者(24)と同じ世代の若者は何を考えて選挙にくるのだろうか。なかなか同世代は現れなかったが、午後7時半、やっと話を聞けた女性は同学年の移住者だった。

 警備の仕事をするアミさん(23)は昨年12月、東京から移住してきた。移住の最初のきっかけは、高校生の時の石垣島旅行。「海がきれいで感動しました。いつかこんなところに住みたいなって」。出身の青森県では見られなかった景色。親には「いつか沖縄に住むから!」と話していた。

 専門学校を卒業後、東京で番組製作の仕事を始めた。満員電車や長時間の通勤など自分には合わないと思った。

 旅行も飛行機も好き。空港で働ける離島はないか探していたら、宮古島を見つけた。数ある離島の中でも人口が多く移住者も多い。行政施設もきれいだし住みやすいと思った。

 移住して半年。島のゆったりした雰囲気が自分に合っている。島では地元のおじぃ、おばぁから、島の言葉のほかに米軍基地や自衛隊の話も聞く。だが、どこか他人事で「そうなんだ」で話が通り過ぎてしまう。

 本土に住んでいたころは「なぜ沖縄のニュースがこんなに大きく取りあげられるの?」と疑問に思っていた。いまは「反対の声を上げるのは、一人一人が真剣に考えているから」と思うようになった。

 候補者のことも詳しくないから政党で選ぶ。それでも、ツイッターで好きな政治家はフォローしている。7月10日は仕事で行けない。「投票は行かないといけないので、とりあえず行くだけ行こう」。そんな思いから仕事帰りに投票所に足を運んだ。

 午後8時、暗くなった期日前投票所で「投票所を閉鎖します」との声が響いた。事務職員らは足早に投票所を後にした。

 大雨に打たれ、宮古そばを食べに行き、合間にレンタカーを返していたら、あっという間に約10時間が過ぎた。市役所のベンチでノートを見返し、今日聞いた話を振り返る。

 沖縄からは政治がどのように見えているのか――。新潟で育ち、福岡で記者をする私の感覚と、どれほど異なるのか。まだまだ分からないことは多いが、考えるヒントをたくさん聞けた。原稿を書き終え、顔を洗って鏡の前に立つと、一段と日に焼けた姿が映った。

21:30(東京都渋谷区)

「選挙は自分の未来を選ぶこと」 投票をかっこいいと思える工夫は十分か

 すっかり日は落ちたのに、渋谷の街は昼のような明るさだ。飲食店やカラオケ店、広告のネオンの明かりがまぶしい。ハチ公前で候補者の街頭演説を聞いていたら、期日前投票所の終了時刻を迎えてしまった。

 しかし、記者(27)の疑問がまだ解決していない。ずばり、投票はダサいのか――。納得のいく答えに出会えるまで、取材をやめるわけにはいかない。

 聴衆のなかに制服姿の少年がいることに気付いた。街頭演説が終わり、渋谷センター街の方へ歩いていく。1時間近く演説を聞きつづけた理由が知りたい。

 「たまたま通りかかって。話がうまいなと思って聞いていました」。高1の男子生徒(15)はそう答えた。政治について考えるのは、テレビで政治家の不祥事ニュースを見たときくらい。演説に足をとめたきっかけは、以前友人が「見かけた」といって写真付きメッセージを送ってきた候補者だったからだ。

 選挙権はまだないが、親がいつも投票へ行くのを見てきた。「18歳になって投票へ行くのが楽しみ。選挙って自分の未来を選ぶってことですよね。それはきっといいことだから」。真っすぐな言葉に、自分が恥ずかしくなった。

 午前8時半から、区役所の期日前投票所を拠点に渋谷の街で多くの人に、疑問を投げかけ続けた。投票へ行くのを「ダサい」と答えた人はいなかったが、「厳かな雰囲気で行きづらい」「便利で楽しい投票所にする工夫が必要」「何をするのかわからない」などハードルの高さを指摘する人は多かった。

 すべての有権者が、投票を「自分の未来を選ぶこと」なのだと思えるようになるには、投票率の低下を憂える前に、来てもらう工夫が十分なのか考えてもいいのではないか。

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    前田直人
    (朝日新聞デジタル事業担当補佐)
    2022年7月3日1時14分 投稿
    【視点】

    有権者をマスでとらえて定量的に分析するのが、世論調査。私は4年余り世論調査部長として定量データと格闘してきましたが、だれもが回答できる平易で普遍的な質問文しか通用しない世論調査では、どうしても読み取れないディテールの世界の深さを感じていまし

    …続きを読む
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