子どもと動物の関係性を築けているか 動物介在教育専門家の問いかけ

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聞き手・太田匡彦
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耕論 動物とのふれあいは必要か?②

 命の大切さや他者への思いやりの心を子どもに教える「命の教育」。そのために幼稚園や小学校、動物園などで動物とふれあう機会が提供されています。しかし、動物福祉の観点から問題も指摘され、教育効果に疑義も呈されています。子どもたちに「命の教育」を行うにあたり、どうあるべきか。広島大学大学院で人間動物関係学などを教える谷田創教授に話を聞きました。

谷田創・広島大学大学院教授

たにだ・はじめ

 1957年生まれ。ヒトと動物の関係学会会長。広島大学大学院教授。専門は人間動物関係学。共著に『保育者と教師のための動物介在教育入門』(岩波書店)。

 子どもが動物と関わったり世話をしたりすることで、他者への思いやりの心を育み、命に対する尊敬の念を持たせ、身の回りの自然環境にも配慮ができるようにする教育を「動物介在教育」と呼びます。欧米では19世紀以降、家庭で犬や猫などのペットを飼育することが広く浸透し、その役割の多くは家庭が担っています。一方で日本では、幼い子どものいる世帯のペット飼育率が低いことから、幼稚園や小学校などが動物介在教育の担い手として期待されています。

 私が子どもだった1950年代から60年代ごろは、まだ身近な場所に自然が豊富に残っていました。家の周りで様々な生き物に出会え、それらを捕まえて飼うことも容易でした。学校教育の現場でわざわざ動物を持ち出す必要はありませんでした。でも高度経済成長を経て、都市部を中心に日常生活で自然に触れる機会が極端に少なくなりました。また、よく言われるように核家族化で、子どもが人の死に触れる機会もほとんどなくなりました。人間社会がどんどん不自然なものになってきたために、動物に頼って教える動物介在教育が必要とされ、かつその重要性が次第に増してきているのです。

谷田さんは、「命の教育」において動物は「魔法の杖」ではないと言います。記事後段では、子どもたちが命の大切さを受け止めるために必要な「関係性」を築くためにどうすればいいのか、具体策を交えて語ります。

 そのため幼稚園の園庭や小学校の教室などで動物飼育が行われるわけですが、多くの場合、それが適切な教育に結びついているとは言い難い現実があります。例えば研究室でかかわっていたある幼稚園の事例ですが、飼育していたハムスターが死んだ時、園児たちのなかに「また新しい子を連れてくればいい」などという反応がありました。

 なぜそうなるのか。死に際し…

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