第11回父は高級車、なのに養育費は…西成・母子家庭の生徒らが政党に質問状

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加藤あず佐
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 シングルマザーへの支援をどう考えていますか――。参院選の投開票日を前に、大阪府立西成高校の1年の全生徒(198人)が、主要9党に質問状を送った。同校は、不登校だった生徒らが学び直せる学校として府教育庁に指定され、複雑な家庭事情を抱える生徒が多く在籍する。質問状に込めた、生徒と先生の思いとは――。

 16日午前。1年5組の授業で、担任の中村優里先生(28)が生徒に問いかけた。

 「シングルマザーは、非正規雇用率が高いです。どうするべきかな?」

 すぐに、数人の生徒が声をあげた。

 「給料を増やす!」

 クラスの半数近くの生徒が、母子・父子の一人親家庭だ。

 授業は、西成高校が独自に行う「反貧困学習」。「貧困の連鎖を断つ」をミッションに15年ほど前に始めた。生徒は自分の生活と社会問題を重ね合わせながら学ぶ。週1回、生活保護やマイノリティーの人権などがテーマ。最近はシングルマザーについて学んでいた。

 シングルマザーの年間就労所得の平均は231万円(2019年、国民生活基礎調査)、離婚した父親から養育費を受給している世帯は24.3%(16年度、厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」)にとどまる――。

 こうした実情を学び、生徒からは「支援制度が不十分だ」という意見が出ていた。1年生は15~16歳で、参院選で選挙権はない。でも、教員らは、「各政党に質問状を出して意見を伝えることが、社会参加の一つの方法だ」と考えた。

「父の愛、感じたことない」 年々減る養育費 

 ある女子生徒(15)は、両親を思いながら、質問を考えていた。

 「シングルマザーの収入は低く、現在の児童扶養手当は不十分。額を増やす必要があると思いますが、どのように思われますか?」

 4歳で両親が離婚し、母、姉と3人暮らし。帰宅せずに酒ばかり飲んでいた父親から、「愛情を感じたことはない」。養育費は年々減り、今は当初の半分以下しかもらっていないと、母から聞いている。

母子家庭で暮らす自分の境遇を重ねながら、制度を学ぶ生徒たち。抱いた疑問、そして先生がこの授業に込めた願いとは――。

 「生活、きついわ」…

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    氏岡真弓
    (朝日新聞編集委員=教育、子ども)
    2022年6月30日7時53分 投稿
    【解説】

    生活の問題から立ち上がる学びです。主要9党に送られた質問状にどんな回答がくるのか、それとも来ないのか。注目したいと思います。 西成高校は長く反貧困学習に取り組んできました。自分や家族の問題を自己責任にせず、社会にどう開くのかの実践の積み重

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