第6回独裁政権は選挙を使って「進化」する データで比べる民主主義の価値
参院選が公示されたが、いまいち盛り上がっていない。「でも、大丈夫。選挙をやっているから民主主義は守られている」。そうとは言えない状況が世界でにわかに増えているという。東島雅昌・東北大准教授は「独裁者も『進化』するんです」。一体、どんな進化を遂げたのか。他方、コロナ禍では「独裁の方が感染抑止に成功した」などとも言われた。本当に、民主主義より独裁の方が優れているのか。聞いてみた。
――ある国の体制を語る際、「民主的」という言葉の意味が、政治的なスタンスに左右される印象があります。
「そうですね。民主主義という概念は多義的で、論者の立場によって都合よく使われることがあります。客観的に考えるためには、基準が必要です」
「民主主義の定義として、実証政治学では、①市民の参政権が保障されていること、②複数政党があること、③公選に基づき政治指導者が選出されること、④政権交代も可能な公正な選挙が行われていること、の四つの指標が使われています。これらの基準のうち、一つでも欠ければ、権威主義ということになります」
――権威主義とは、いわゆる独裁体制のことですね。しかし、冷戦後は、世界で民主化が進んだと思いますが。
「スウェーデンの研究所が発表している『V―dem』というデータベースがあります。1789年以降の世界の国々の政体について、自由で公正な選挙、市民の自由、司法の独立、メディアの自由などを数値化したものです。統計的に処理することで、客観的に体制や推移を比較できるのが利点です」
「これを見ると、民主的な選挙を行う国は1970年代半ばから急増し、2006年ごろには世界の国々の6割ほどに達します。しかし、その後は横ばいが続き、増えていません」
「選挙に加え、法の下の平等や市民の自由などを加味した、自由民主主義体制で調べると、やはり70年代半ばから増え始めますが、こちらは06年ごろから減り始めています」
「つまり、複数政党が参加する選挙はしているが、自由や権利が守られていない国が出てきているということです。こうした体制を競争的権威主義と言います」
選挙は「使い勝手の良い装置」
――単純な独裁体制ではなくなっている、と。
「60~80年代の中南米の…
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- 【視点】
「政治に関心持たず生きていける国は良い国です」 先日、麻生太郎自民党副総裁が三重県桑名市内での講演で発言したコメントですが、この記事を読んでまずこの発言を思い出しました。 他紙の調査ですが、先日世代別の自民党支持率を政権ごとに追った結果
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