マスク外す?外さない? 自分で決められない日本社会の空気感

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聞き手・田中聡子 聞き手・富田洸平 聞き手・小村田義之
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 「脱マスク」の基準を政府が示し、「そろそろマスクを外しても……」と迷いながらも、周りの視線が気になる今日このごろ。マスクを通して見える日本社会のありようを聞いた。

ルール疑わない社会、心配 藤嶋由香さん(飲食店主)

 政府が示したマスクを外せる基準は、なんだかばかばかしいと思いました。「2メートルの距離があれば」とか「自転車やランニングなら」とか。でも笑えないし、怖いのは、それをまじめに「ルール」ととらえるような社会です。

 コロナ禍で飲食店には、夜間の休業要請から始まり、酒を出すのは午後8時まで、4人以内など様々な要請が出されました。要請通りにしていては、従業員の雇用も、取引先の酒屋さんも守れません。生きていくためには、自分の頭で考えるしかなかった。

 それでも最初のうちは、経験のないコロナに対して政府や自治体も一生懸命だと感じ、要請に従っていました。でも、「酒は出すな」の時に、ぶち切れましたね。こんなに滑稽なことを言い出すなんて、と。国会を見に行ったら、ずいぶんやる気のなさそうな議員が飲食店のルールを話し合っていた。それを見て、国への期待を捨てました。だったら自分たちできちんと対策して営業しようと決め、今もそうしています。

 自分で決めるということは、その責任も自分が負うことになります。要請に従わないのだから協力金はもらえない。嫌がらせの電話も最初のうちはとても多かった。

マスクを通して見える日本社会のありようを、3人の 論者へのインタビューから多角的に考えます。記事後半では、筑波大学教授の原田隆之さんが、心理的な視点から、日本にマスクが浸透した理由を分析します。米国研究者の森本あんりさんは、アメリカ人のマスクに対する考え方を歴史的・宗教的背景を交え解説します。

 注目されて何度もメディアの…

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    辻外記子
    (朝日新聞科学みらい部大阪担当部長)
    2022年6月15日8時18分 投稿
    【視点】

     「マスクを着けて」。2年以上、何度も記事に書いてきました。「ずっとこれを発信し続けるのか」と思ったこともありましたが、少しずつ変化が訪れています。  マスクをめぐる3人のご主張の中で最も印象的だったのは、原田隆之さんの以下のフレーズです

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    鵜飼啓
    (朝日新聞オピニオン編集長代理=国際)
    2022年6月15日11時29分 投稿
    【視点】

     米国でマスクに対する拒否感が強いのは、政府という権威に対する反発という森本あんりさんの指摘はその通りだと思います。外国から見ればアメリカは一つの国に見えますが、実際には州という小さな「国」が集まって出来ているようなものです。コロナに対する

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