接種せず感染した人数を多めに公表 厚労省と官房長官、説明に矛盾も

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枝松佑樹
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 厚生労働省新型コロナウイルスの新規感染者について集計する際、本来は「ワクチン接種歴不明」の人を「未接種」として計上していました。未接種の新規感染者数が、実態より多く公表されていたことが明らかとなったのです。

 この実態を反映しないデータをもとに、政府がワクチンの効果を主張したこともありました。

 厚労省は「意図的ではなかった」と弁明していますが、いくつか矛盾点もあります。取材から現時点で分かっていることをお伝えします。

5月、突然のデータ修正

 新型コロナウイルスの感染者が確認されると、医療機関や保健所は、厚労省の感染者情報システム「ハーシス」に感染者の年齢や性別、ワクチンの接種歴などを入力することになっている。

 そのうち接種歴は、「未接種」「2回目接種済み」「3回目接種済み」「接種歴不明」に分けて集計。データは、厚労省がコロナ対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」で公表してきた。

 どの年代の感染者も「接種済み」より「未接種」の方が多い傾向が続いていた。

 4月4~10日の週について、12歳以上の全年代で10万人あたりの新規感染者をみると、「2回接種済み」の214人に対し、「未接種」は倍以上の529人だった。

 ところが、翌週の4月11~17日のデータでは、「2回接種済み」の217人に対し「未接種」は230人で、あまり差がなくなった。年代によっては「2回接種済み」が「未接種」を上回った。

 4月11~17日のデータが公表された5月11日の資料には、突如、このような注意書きが加わった。

 「ワクチン接種歴が未記入の場合、未接種に分類していたが、5月11日以降は接種歴不明に分類している」

 ハーシス上で接種歴の入力がなかった人について、「接種済み」である可能性があるにもかかわらず、それまで「未接種」に計上していたことを明らかにするとともに、「接種歴不明」に計上するよう修正した結果、未接種の新規感染者が大幅に減ったのだ。

「意図的に改ざん?」 苦しい弁解

 政府やコロナ対策を助言する専門家らは、ワクチンの有効性を示す根拠として、この資料を何度も引用してきた。

 専門家組織座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は4月13日、「資料を見るとよくわかる。未接種、2回接種済み、3回接種済みと進むことで新規感染者は減る。感染を防ぐことができる」と説明。

 政府の佐々木健・内閣審議官も同月20日、「もう少し分析が必要だが(資料から)一定の傾向は見える」と述べていた。

 厚労省はワクチン接種を推進する立場にあるため、SNS上には、「意図的に未接種の感染者数を多く見せようとした」と指摘する声が多い。実際はどうか。

 取材では、意図的だったと断定できる根拠は得られていない。ただ、厚労省の言い分は苦しく、疑念を払拭(ふっしょく)できていない。

 資料を作った厚労省コロナ対策推進本部によると、昨年の接種を始めた当初、接種歴がある新規感染者は少なかった。

 医療機関や自治体のハーシス…

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