「ウクライナでの悲惨な紛争について懸念を表明し、法の支配や主権および領土一体性などの諸原則はいかなる地域においても守らなければならないことを確認した」
24日午後、首相官邸。クアッド首脳会合で議長を務めた岸田文雄首相は、淡々と原稿を読み上げた。
前日の日米首脳会談後の会見では「ロシアによるウクライナ侵略のような、力による一方的な現状変更」を非難したが、「侵略」は「紛争」にかわり、非難は「懸念」へと弱まった。共同声明に「ロシア」は一文字も盛り込まれず、批判もなかった。ロシアと歴史的に結びつきが強いインドへの配慮だ。
日米豪は、非同盟外交を掲げて個別の分野ごとに組む相手を使い分けるインドをクアッドの枠組みに取り込むことを優先。首相は会見で「各国の歴史的な経緯は地理的状況に鑑みて、同志国の間でも立場が完全に一致しないこともある、これは当然のこと。それを前提として相互の理解を深めて、協力の輪を広げていくことが重要だ」と説明した。
外務省幹部は「クアッドはインドを引きつけるための磁石だ」と話す。別の幹部も「インドが離れてでも日米豪でロシアや中国と対峙(たいじ)していくのか、それともインドを巻き込んで、できる協力をしていくのか。今の我々は後者の立場だ」と話す。
日本としては、中国と対抗する枠組みを維持するのが目的であり、そのためには、インドの参加が欠かせないとの思いがある。
ただ、今回の共同声明には「中国」という文字も盛り込まれていなかった。
会合では、東シナ海、南シナ海の「一方的な現状変更の試みへの深刻な懸念」も議論した。念頭にあるのは海洋進出を強める中国だが、首相は「(クアッドは)特定の国を対象にしたものではない」とあえて強調した。
首相はむしろ「持続可能で包…
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