♪ダイヤル回して…懐メロで学ぶ企業史 NMBの2人が四季報を読む

有料記事NMB48のレッツ・スタディー!

構成・阪本輝昭
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「NMB48のレッツ・スタディー!」経済編⑥

 人気投資漫画「インベスターZ」にNMB48メンバーが入り込み、経済知識や理解を深める「NMB48のレッツ・スタディー!」経済編。ともに現役大学生で、経済学を学ぶNMB48の安部若菜さん(20)と早川夢菜(ゆな)さん(19)が、「インベスターZ」の登場人物たちと一緒に「お金と経済」について考えます。(構成・阪本輝昭)

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「会社四季報」オタク 松井君の登場で…

 早川夢菜:「♪ダイヤル~回して~ 手を止めた~」

 安部若菜:「ゆななん、ご機嫌だね。何を歌ってるの?」

 早川:「小林明子さんの名曲『恋におちて -Fall in love-』(1985年)で~す!」

 安部:「めっちゃ昭和ソングじゃない」

 早川:「お母さんが好きな曲なんですよ。動画配信で歌うこともあります。ファンの人たちには新鮮だったり懐かしかったりするみたいで、結構評判いいんですよ。昭和ソング」

 松井秀樹(道塾学園1年生):「あっ、本物の『わかぽん』と『ゆななん』だ!」

 早川・安部:「えっ、誰?」

 財前孝史(道塾学園「投資部」部員):「ごめん、僕の同級生の松井。NMB48のファンらしくて、どうしても会いたいと……」

 安部:「松井君……。見覚えあるよ。確か『インベスターZ』第12巻に出てきた……」

 財前:「そう。『会社四季報』(東洋経済新報社)が好きで好きでたまらない彼さ」

 安部:「いつも四季報を持ち歩いているんだっけ」

 松井:「……」

 早川:「どうしたの?」

 松井:「いつも一緒に居すぎて、僕が四季報を持ち歩いているのか、四季報が僕を持ち歩いているのか、もはやわからない」

 安部:「ちょっとめんどくさい人……?」

 松井:「いま、電話機の話をしていたね?」

 早川:「してないよ」

 松井:「ダイヤルがどうとかって……」

 早川:「歌の中の話だよ! ダイヤル式の電話機なんて博物館でしか見たことないよ」

 松井:「いわゆる黒電話……1世代以上前の電話機だ。僕はレトロな機械が好きでね」

 安部:「……趣味の幅が広いんだね」

 松井:「黒電話は、プッシュホンや携帯電話に追われ、今や完全にすたれてしまったね。昭和時代にせっせと黒電話をつくっていた会社は、今どうなっていると思う?」

 財前:「そりゃ会社をたたむか、別業種に転じるかしたんじゃない? どっちにしろ経営規模の縮小は避けられなかったと思うよ」

 安部:「そうなのかなあ。日本には100年以上続く企業が2万社もあるんだよ?(「百年続く企業の条件」朝日新書)……きっと今もしたたかに生き残っているんじゃない?」

 松井:「さすが安部さんだね。正解」

 安部:「でしょ! そうだと思った」

 松井:「そんな黒電話メーカーの一つが、例えば現在の富士通(本社・東京)さ」

 財前:「え!」

 早川:「そういえば第12巻で松井君、富士通のルーツをとうとうと説明してましたね」

 松井:「そう。足尾銅山の経営で知られる鉱山王の古河市兵衛(1832~1903)まで源流をたどることができる」

 安部:「黒電話もつくっていたの?」

 松井:「うん。会社四季報の『富士通』の欄を見て。設立が『1935年6月』とあるでしょ。前身の富士電機製造株式会社から『電話部』が分かれてできたのがこのとき」

 財前:「ああ、確かそうだった……」

 松井:「性能の高い電話機を製造し、戦後の一時期くらいまでは電話が主力事業だった」 

 早川:「ええと、四季報によると今は……『ITサービス国内首位』って書いてある」 

 安部:「どうやってそこまで大きく?」

 松井:「富士通のサイトによると、1950年代には早くも自社でコンピューターの開発を成功させているんだ。当時の主要事業だった『電話』に関係する部品を使ってね」

 安部:「へえ。黒電話をつくりつつ、未知のコンピューター事業への挑戦も同時に進めていたんだね。それが時を経て芽吹き、後には電話に取って代わる事業にまで育ったと」

 松井:「僕が四季報を好きなのはね……。膨大な数の企業の履歴書を一覧できる便利さもあるけれど、様々な会社の成り立ちや変遷のドラマをひしひしと感じられるからなんだ」

 安部:「そうだね。会社にとっての履歴書でもあるし、財務状態などの『健康チェック』みたいな面もあるし。私も投資家の一人として、四季報は毎号、目を通しているよ」

 財前:「四季報のコメント欄や数字を読めば、その会社に期待をもてる要素、逆に不安な要素、そして今後どういう方向に進もうとしているのかなども見えてくるんだ。その意味では未来予想図でもあるのかもね」

 早川:「これから成長する会社、伸び悩むであろう会社を見分けられますか? 売れっ子になれるひけつを四季報から探せたらいいな、と思ったんですけど」

 松井:「そんなに簡単にわかれば苦労しないよ! ……でも、個人的に思うことは一つだけあるんだよね」

 早川・安部:「なになに?」

 松井:「長いスパンでみれば、不思議の上げ、不思議の下げというものはないってことかな。上げも下げも、あとから子細にみれば、公開情報やオープンになっている情報の中にその理由がひそんでいることが多い」

 早川:「アイドルも同じなのかなあ……」

 松井:「『この人、売れてるなあ』と思う先輩がいたら、その人を会社に見立てて、『四季報』を書くつもりでじっくり観察してみたら。もしかしたら、そこにヒントが……」

 早川・安部:「『アイドル四季報』だね! それ、いいアイデア!」

 安部:「……と思ったけど、その前にまずは、自分自身の『四季報』を書いてみることが大事なんじゃない? 自己紹介と自己分析を兼ねてさあ」

 早川:「この1年の業績。達成できたこと、達成できなかったこと、今後やりたいこと……。確かに、『四季報』のスタイルをとれば、自分の現在地を客観的に見つめることができそうですね。やってみましょう!」

 財前:「本物の四季報みたいに四半期ごとに内容を更新したら、これ以上ない個人史になるし、同時にアイドルとしての成長に役立つ糧になるかも知れないね」

 早川:「わたし、みんなの心の中に住むアイドルになるという大きな夢があるんで。そのために役立ちそうなことは、何でもやりますよ。 ♪もしも願いが 叶(かな)うなら~……」

 安部:「♪吐息を白いバラに変えて……」

 早川:「わかぽんさんも昭和ソング好きじゃないですか」

 安部:「……」

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安部若菜さんと早川夢菜さんを「四季報」風に紹介すると?

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ミヤウチ先生のかんたん!経済講座 四季報を読めば、コレがわかる

 追手門学院大の宮宇地俊岳・准教授が各回のカギとなる経済用語を解説します。

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 「会社四季報」とはどんな本で、そこから何が読み取れるのでしょうか。

 イソップ物語に、ウサギとカメが競争する有名な話があります。ウサギはカメよりもずっと足が速く、そのために油断して木陰でひと休みしていたらカメに距離を詰められ、気付かないうちに追い抜かれてしまう――という話です。

 企業活動に置き換えると、ウサギはライバル社の動向や時流などの環境を注視して経営判断を下すタイプ。一方のカメは、周りの状況ではなく、ゴール(自らの理念)を見据えて事業を進めるタイプ――と例えられるかも知れません。

 会社四季報は、株式投資の対象となる上場企業の経営に関する情報を網羅的に掲載した刊行物で、3カ月に1回の頻度で発刊されます。具体的には、会社の設立年、どのようなビジネスを手掛けているか(事業構成)、本社や支店の所在地、主要な取引先、業績数値とその解説記事、配当の状況、主要な株主の構成、過去の株価の値動きなどの情報が記載されています。

 これらの情報から、たとえば関東・関西、あるいは北米など、どの地域に強みをもつ企業なのかについて、本社・支店の所在地や主要な取引先の情報から読み取れます。また、得意な分野に特化するかたちで事業展開をしている企業か、それとも幅広く様々な事業を手がけている企業なのかについては、事業構成の情報からわかります。本業の業績が堅調かどうかは、業績数値の営業利益が増えているかといったことから確認できます。

 スピード感をもって事業を拡…

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