「軍事的中立」を長年、掲げてきた北欧のフィンランドが、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する意欲を示しています。なぜいま、フィンランドは西側の軍事同盟に加わろうとしているのか。NATOの「拡大」に異議を唱え、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシアにはどんな影響を及ぼすのか。国際安全保障や欧州政治に詳しい鶴岡路人(みちと)・慶応大准教授に聞きました。
――第2次世界大戦後、「軍事的中立」の立場をとってきたフィンランドがNATOに加盟申請をしようとしています。
フィンランドでは最近は「中立」という言葉はほぼ使われず、「軍事的非同盟」と呼ばれていますが、NATOへの加盟申請が目前に迫り、ここまで来たのか、というのが率直な感想です。
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、フィンランド国内で加盟を巡る議論が沸騰するだろうとは予測していましたが、実際にこれほど短期間のうちに加盟申請に至るとは想像していませんでした。第2次世界大戦の終結以降、続いてきた欧州秩序が、今まさに変わろうとしています。この意味は過小評価してはいけません。
フィンランドにとってNATOに加盟する最大のメリットは、加盟国に対する武力攻撃を全体への攻撃とみなす「集団防衛」を規定した北大西洋条約第5条の適用対象となる点です。
第5条はNATOの中核で、加盟国にのみ適用されるものですから、加盟国と非加盟国の差は非常に大きい。そのことは、NATOの非加盟国であるウクライナでの戦争が、残念ながら示してしまいました。
――フィンランドは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて安保戦略を唐突に転換したのでしょうか?
突如NATOの加盟を表明したフィンランド。EUの一員でもあり、鶴岡准教授が「一貫して西側の国」と語るこの国が、これまでNATOに入ってこなかったのには理由がありました。今回のウクライナ侵攻が、フィンランドや日本を含むロシアの周辺国にどのような影響を与えたのか、記事の後半でじっくり語ってもらいました。
フィンランドに歴史的決断を促…