ロシアによるウクライナへの侵攻を受けて、国連安全保障理事会への批判が高まっています。ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理が法的拘束力のある決議を一つも通せていないからです。この2カ月余りの、安保理を含む国連の動きをどう評価すればいいのか。安保理改革は現実的なのか。来年から安保理入りが濃厚な日本はなにができるのか。シンクタンク「国際危機グループ」の国連担当、リチャード・ゴーワン氏に聞きました。

とにかく慎重だったグテーレス氏

 ――ウクライナ危機をめぐって、安保理を含む国連の動きについて、どのように評価していますか。

 安保理にウクライナを救えるはずがありませんでした。ロシアが自国の行動を非難する決議案に拒否権を行使することも、完全に予測できたことです。私たちとしては、安保理の失敗を予想していましたし、実際に失敗しました。

 ただ、安保理以外の国連システムについては、より良い働きを見せたと指摘しておくことは大事だと思います。国連総会は、ロシアを非難する決議を大多数の賛成によって通しました。国連人権理事会は、ウクライナで何が起きているのかを調べる調査委員会を立ち上げました。ウクライナ国内には人道支援のための職員たちがいます。つまり、国連システム全体としてはウクライナを支援しているわけです。

A-stories ウクライナ危機の深層
ウクライナ危機はどうなるのか。世界や日本の有識者に聞きました。

 ――グテーレス事務総長も、ロシアを強く非難してきましたね。

 そうですね。ただ、グテーレス氏にできることは限られていますし、グテーレス氏はとにかく慎重です。(内戦が続く)エチオピアやその他の危機についても「慎重すぎる」として、他の国連職員から批判を浴びてきました。

 ウクライナについても、緊張が…

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