南北に連なる山 地形上のリスク高い九州 線状降水帯予測生かせるか
積乱雲が連なって発生することで、非常に激しい雨が同じ場所で降り続く線状降水帯。気象庁が1日から発生半日前の予測を始めるが、九州は地形上、そのリスクは高いとされる。自治体や住民がいち早く避難への心構えを持つことに生かせるか。その精度には課題も残る。
豪雨に備える防災企画でKBCと協力
朝日新聞はKBC九州朝日放送(福岡市)と協力し、豪雨に備える企画を随時展開します。こうした企画はKBCの番組でも放送されます。
2017年7月の九州北部豪雨で、3人が亡くなった福岡県東峰村。役場の玄関から入って右側の柱に、縦型の大型モニターが設置されている。画面は、村を含む九州一帯の雨雲の動きや天気予報を映し出す。
「先進地」の福岡県東峰村で見えてきたことは
東峰村は、線状降水帯予測の「先進地」とされる。19年から防災科学技術研究所(本所・茨城県つくば市)などの実証実験に、隣の朝倉市や熊本県阿蘇市など九州4県の計8市と参加する(現在は熊本県人吉市、八代市を含む4県11市村)。
村は1日2回、過去の統計を元にした約半日後の線状降水帯の発生予測情報をメールで受け取り、避難所開設の準備や住民への注意喚起の目安にしている。
村役場のモニターにはこうした予測情報が映され、発生の恐れがあるエリアは青色、発生中のエリアは赤色の楕円(だえん)が地図上に表示される。夜間の雨を心配して来庁する村民には、表示を踏まえて避難への心構えを呼び掛けることもある。
村の防災管理官の阿波康成さん(64)は「夜中に人を動かさないのが避難の基本。『今夜どうなるか』が見えるのはいいことだ」と意義を語る。3人の乳幼児を育てる村民の女性(37)も「経験や感覚ではなく、目に見えるデータで避難するかがわかれば、信頼できる」と期待する。
ただ、課題も残る。気象庁によると、6月から始まる予測は発生地域の範囲が「九州北部」「九州南部」と広く、担当者は「予測が難しく、精度はそれほど上がっていない」と認める。過去3年間で、線状降水帯の発生を予測した地方で的中したのは4回に1回程度。3回に2回程度は発生を見逃したという。
こうした現状に対し、阿波さんは「自分のところが危ないのかわからないと、予測はかえって住民の不安をあおることになりかねない」と危惧し、今後、利活用のあり方を見極めたいという。(九州朝日放送・神野勇人)
地形上の脅威にさらされる九州
「とりわけ九州にとって線状…
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