ウクライナ侵攻に憲法9条が出す答え 今こそ平和主義を見つめ直す
日本国憲法の施行からまもなく75年。ウクライナの戦禍に世界の人々の関心が集まるなか、憲法が掲げている「平和主義」はいまどういう意味を持つのか。日本をはじめ世界の「歴史の教訓」に何を学ぶべきか。それぞれの専門家に聞いた。
国境や民族を超えた「NO WAR」を 歴史学者・山室信一さん
――歴史家として、ウクライナ危機をどう見ていますか。
「ウクライナ侵略戦争の経過は、日本が1931年の満州事変から敗戦に至る過程と、まさに二重写しに見えます」
――二重写し、とは。
「ロシアがドンバス地方の二つの『人民共和国』を承認し、武力で拡張していく過程は、満州事変や満州国建国から日中戦争への歩みを想起させます。さらに日本は大東亜共栄圏の建設を唱えましたが、プーチンがめざすユーラシア主義による広域支配に重なります。いま国連では、ロシアと欧米諸国の対立と分断が進んでいますが、満州事変をきっかけに日本が国際連盟を脱退して日独伊三国同盟に進んだことを思わせます。かつて日本がたどった道をロシアが行きかねない懸念があります」
山室信一さんはこの後、軍備撤廃を説く「非戦平和論」に2人の旧日本軍人がたどり着いた歴史に注目します。記事後半では、政治哲学者の松元雅和さんが、国際平和を希求する手段としての平和「優先」主義の考え方の大切さを指摘します。
――岸田文雄首相は、「力に…
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- 【視点】
憲法をめぐる政治や社会の状況を取材している立場から、とても大切なお二人のご指摘だと申し上げた上で、少し述べます。 ウクライナ危機が国内の9条論議にもたらしている影響には驚かされます。日本は戦後、9条で「戦力不保持」という理想を掲げ、しかし
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