いらん葉っぱ? 味は立派! 上賀茂の農家が届ける畑仕事のごほうび

有料記事勝手に関西遺産

編集委員・長沢美津子
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「まだまだ勝手に関西遺産

 季節のはざまにパッと出ては消える野菜の「間引き菜」。言葉の響きは悲しいけれど、食べた人だけが知るおいしさだ。

 「質素でもきれいなおかずを、関西の庶民は食べてきたんです」

 10年以上前、伝統食の保存運動の会で聞いた言葉が、ずっと頭に残っていた。高価でなくても洗練された味は、「B級グルメ」ではないというメッセージに受け取った。

 食をテーマに取材をしてきた私が、東京から関西に来て1年、「質素できれいって、これか!」と腑(ふ)に落ちたのが、京都市内のスーパーで見つけた大根の「間引き菜」だ。地場野菜の売り場に、いま届きましたよ、と言わんばかりに積んである。見るからにやわらかそうな葉っぱが「食べなくていいの?」と訴えてきて、むんずとつかんでレジへ。

大根、カブ、ニンジン…市場に出さない伝統が幸いに

後半では、間引き菜のおいしい食べ方を京都の料理研究家の杉本節子さんに聞き、落語家の桂雀三郎さんが間引き菜のエピソードを披露してくれます。

 野菜づくりをする方はご存じの通り、まいた種から芽が出た後、密生した場所の株を減らすのが間引き。育ちのいい株を選抜し、形のそろった作物に育てる技術だ。敗れた側を間引き菜と呼ぶ。言葉は身もふたもないけれど、実はおいしい食材だ。

 収穫の量も時期も不安定で流通に乗りにくいが、畑と町、農家と食卓が近い環境なら問題にならない。京都・上賀茂で100年続く農家、「森田良農園」の森田良彦さん(74)は、「このあたりの農家は市場に出さず、野菜を町まで売りにいった伝統がある」と話す。時が流れ、地域のマルシェへの出店や通信販売にやり方は変わっても、小さな流通は脈々と続いている。

 「野菜にもよるけれど、本葉…

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