エスパルス 新スタジアム実現なるか 候補地絞り込みへ

黒田壮吉
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 JR清水駅前(静岡市清水区)にサッカースタジアムを建設する構想が注目されている。清水エスパルス本拠地の「IAIスタジアム日本平(アイスタ)」は交通の便も悪く、市民には新スタジアムへの待望論もある。「サッカーのまち」に新スタジアムは実現するのか。(黒田壮吉)

 「エネオスの遊休地は清水駅に近く、広さもあることから(サッカースタジアムの)十分な候補地になり得る」。静岡市の田辺信宏市長は3月中旬の会見でこのような認識を示した。

 候補地として挙がっているのは、JR清水駅から東に約100メートルにある石油元売り最大手ENEOS(エネオス)が所有する製油所跡地。2018年には、同社が液化天然ガス(LNG)火力発電所の建設を計画したが、地元の反対などで断念した場所で、いまは遊休地となっている。

 新スタジアムの構想づくりは、19年4月の市長選で3選した田辺市長が選挙公約に掲げており、市は21年度にスタジアム調査を300万円で発注。今年度予算にも関連費約1300万円を盛り込んだ。市は6月にも官民でつくる検討委員会を立ち上げ、今秋にも市民のパブリックコメントを集めて有力候補地を絞り込む方針だ。

 一方、川勝平太知事も「清水エスパルスは静岡県の財産。(費用負担を含め)それ相応の汗をかく」と前向きだ。検討委をめぐっても、川勝知事は「オブザーバーでもいいので加われればという希望がある」とし、「(遊休地は)津波浸水想定区域にあり、安全の観点からもコミットせざるを得ない」と話している。

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 なぜ、新しいサッカースタジアムが必要とされているのか。

 現在のアイスタは1991年、市が建設し、同年の高校総体のサッカーのメイン会場として使われた。その後エスパルスの本拠地として改修され、95年に2万人収容の規模となった。

 だが、2012年に導入されたJリーグの基準で、屋根のカバー率不足が指摘された。観客席の3分の1以上を覆うよう求めているが、アイスタの屋根は約26%と足りていない。

 また、JR清水駅からバスで約20分かかり、試合後はバスを待つ人々で行列ができることもしばしばだ。乗用車の駐車場も限られるため、交通の便が悪いとの指摘も多い。

 こうした現状を受け、清水エスパルスは2014年、静岡市にサッカーの新スタジアムの早期実現を要望した。当時のJリーグチェアマン村井満氏も静岡市長を訪ね、「駅前など中心部にスタジアムを」と求めていた。

 ファンの願いもある。エスパルスファン歴20年という静岡市の女性(54)は「もしも駅近くにスタジアムができれば観戦する機会が増えそう」と話す。同市清水区の30代女性は「清水は遊ぶところが少ないので、商業施設をスタジアムと隣接して作ってくれたらうれしい」と語った。

 清水エスパルスの山室晋也社長は「新スタジアム構想は非常に夢のある話だ。アイスタはアクセスに問題があり、新スタジアムを渇望するファンは多い。スタジアムを中心に地域のにぎわいを作ることができれば」と話す。

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 JR清水駅前の新スタジアム構想だが、エネオス側が土地を提供してくれるかや、その際の提供費用など決まっていないことも多い。コロナ禍で自治体、企業ともに財政事情が厳しいなか、そもそも建設費用を誰が負担するのかという課題ものしかかる。

 現在のアイスタは市が建設・改修で総額65億円の費用を負担したが、建設資材などが高騰していることから費用は増えることが予想される。エスパルスの山室社長は「ざっと200億円はかかるのではないか」と見通しを示す。

 新スタジアムを検討する静岡市の田辺市長は、市だけで建設するのは難しいとして、「公民連携の形でのぞみたい」と民間企業の協力に期待する。

 参考の例として田辺氏が挙げるのが、ガンバ大阪の本拠地「パナソニックスタジアム吹田」だ。総工費約140億円のうち、約106億円を企業やサポーターによる寄付金でまかなった。内訳は地元を中心に延べ721社から約100億円、個人は約3万4千人から約6億2千万円で、残りはスポーツ振興くじの助成金などを活用した。

 ただ、企業から寄付が集まるかは不透明な面も多い。山室社長は「地元自治体や国、財界に働きかけるなど、やれることはやっていきたい」と話した。

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