偏差値を40も上げて慶応大学に合格した「ビリギャル」の本人、小林さやかさん(34)が今年、米ニューヨークにある名門、コロンビア大の教育大学院に留学します。でも、決意した2年前、大学受験で鍛えた英語力はさびついていて……。そこから、留学に必要な英検1級レベルの英語力を身につけた秘訣(ひけつ)は? 聞いてみると、まさに「ビリギャル流」と言える学習法でした。

こばやし・さやか
1988年、愛知県生まれ。高校2年時の「偏差値28」から成績を上げ、慶応大総合政策学部に現役で合格した。2013年に塾の担当講師だった坪田信貴さんの著書「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(KADOKAWA)が出版され、広く知られるようになった。21年に聖心女子大大学院修士課程修了(学習科学)。22年秋からコロンビア教育大学院で認知科学を研究予定。

 ――そもそも、どうして留学しようと思ったのですか。

 「この7、8年、ビリギャルとして呼んでいただけるようになり、学校や行政機関、企業など、500回以上も講演をしてきました。その先々で、『さやかちゃんのおかげで人生が変わった』と泣いて伝えてくれる子どもたちがたくさんいました。こんなふうに思ってくれる人がたくさんいるんだ、と衝撃を受け、ちゃんとこの仕事をやっていきたいと、大学卒業後になった大好きなウェディングプランナーの仕事を辞めたんです」

 「そんななかで、教育について深く学びたいと思うようになり、2019年に聖心女子大の大学院に入り、学習科学を学びました。講演だけでは、子どもたちからのSOSに全部、答えてあげることができないなって。私には、自分を信じてくれた(塾講師の)坪田(信貴)先生や母の存在が大きかった。でも、そういう存在がいない、と訴える子どもたちに多く出会ってきました。私自身がもっと学んで子どもたちの周りの大人を変えられるだけの力が欲しいと思い始めました。そのためには、日本から出て、無意識に持ってしまっているだろうバイアスをぶちこわす、という経験をしないとダメだなと、留学を決意しました」

 「英語ができないこともコンプレックスでした。英語を使えるようになれば、途端に世界で15億人も交流できる人が増えますよね。そんな最強の武器を、なんで私は手にしようとしてこなかったんだろう、とずっと後悔していました。学生のときに留学すればよかったと」

留学を決意、でも英語力は……

 ――留学に向けた英語の勉強をはじめたのはいつですか。

 「20年2月ごろです。夫に話すと、即決で『俺もいっしょに行くよ』と。サラリーマンである夫が会社を辞めて一緒に海外に行くことは勇気のいる決断だと思いますが、私以上に自由な発想の夫に、今回の留学準備中、本当に支えられました。それで、講演の数を減らして勉強をしないと、と思っていたら、新型コロナのために講演が自然に減っていって……」

 ――大学受験の勉強から15年ほどたっていましたが、英語力は?

 「15年間ほとんど英語に触れずに生きてきたので、大学受験で必死に詰め込んだ英語の知識が頭から抜けていました。require(要求する)の意味がわからなかったくらいです。スピーキング力も、『仕事は何ですか』と聞かれて、“My job is speaking”と答えるほどで、語彙(ごい)も文法もめちゃくちゃでした。presidentやpeopleといったつづりも、正確に書けなくなっていました」

 「大学院でも、先生に渡された英語の論文を1ページ読むのに1週間かかったんですよ。教授が引いていたぐらい読めなくて」

 ――TOEFL(留学希望者の英語力を測るためなどに使われる国際英語テスト。リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの各30点で120点満点)で一定の点を取れないと、米国の大学院には出願できないですね。

 「コロンビア大教育大学院は、100点が『足切り』ラインです。最初の半年はまず、英検2級と準2級の単語集を完全に覚えるまで繰り返しました。それから、英文法も『5文型って何だっけ』とか、『現在完了と過去形の違いって』というところから、勉強し直しました。半年くらい勉強したあと、20年8月に最初にTOEFLを受けたときの点が62点。何もしないで受ければ、40点も取れなかったと思います。リスニングは11点で、ほとんど何もわからない状態です。聞こえても雑音です」

 ――そこからどうしたのですか。

 「リスニング対策として、ディ…

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