まだできない国産ワクチン 「国を挙げて」開発めざし司令塔発足

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市野塊
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 新たな感染症のパンデミック(世界的大流行)を見据え、国産ワクチン開発の司令塔となる組織が3月、発足した。新型コロナウイルス対応では欧米に先行され、いまだに国産ワクチンはない。「国を挙げて取り組む」とする新体制はうまく機能するのか。(市野塊)

スカーダ発足 「ワクチンを国内で開発・生産できる力を」

 「ワクチンを国内で開発・生産できる力を持つ。そのために国を挙げて、平時を含めて長期的に取り組む」

 22日の会見で、内閣府健康・医療戦略推進事務局の八神敦雄事務局長はこう話し、国産ワクチンの開発に意欲を見せた。

 新たな組織は、「SCARDA」(スカーダ、先進的研究開発戦略センター)。日本医療研究開発機構(AMED)内に新設された。AMEDはこれまでも医療研究に資金を投資してきたが、スカーダはワクチン研究に特化。自ら情報収集や分析をし、有望な研究に投資する。

 また、文部科学省とともに「世界トップレベル研究開発拠点」となる研究機関を選び、ワクチンにかかわる基礎研究を支援する。経済産業省とは、ワクチン開発に取り組むベンチャー企業を対象に、初期の臨床試験(治験)を支援する。最終段階の治験になると大手企業などの資金が集まりやすいが、初期段階では支援も手薄なためだ。

 背景には新型コロナ対応での反省がある。

欧米が先行 まだできない国産ワクチン

 米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカなど、欧米の製薬企業が次々とワクチン開発を成功させる一方、日本で開発中のワクチンで承認されたものはまだない。

 日本では過去にワクチン接種後の副反応が社会問題となり、訴訟が相次いだこともあった。感染症の流行は予想が難しく、ワクチンを開発しても投資回収の見通しがつきにくい。こうしたことも背景にあり、企業や研究者が育たず、国内で開発力が高まらなかった。

 しかし、海外からの輸入に頼っていては、ワクチンが必要なときに確保できるかわからない。仮に日本だけで感染症が流行した場合でも、海外企業に開発を頼らざるを得ない。

5年1500億円研究投資 今後のかじ取り課題

 政府は昨年6月、ワクチン開発の長期戦略を閣議決定した。ワクチン開発を「外交や安全保障の観点からも極めて重要」と明記。スカーダ新設も表明した。

 組織の肝となる予算は、研究への投資に5年間で約1500億円。文科省経産省との共同事業はそれぞれ5年間で約500億円がついた。一方、5年を過ぎた後については「結果を踏まえて検討」(内閣府)としており、決まっていない。一時的な支援にとどまれば、開発力の向上にはつながらない可能性がある。

 あるAMED幹部は「資金が来れば、研究者が増える可能性はある。ただ、資金がどれだけ続くかが課題だ」と指摘する。「得られた実績をどう集約し、形にしていくのか。スカーダにはそのかじ取り役も求められる難しさがある」と話す。

ワクチン開発100日以内 できるか

 スカーダが理想とするものの一つに「100日ミッション」がある。パンデミックが起きたときに、100日以内にワクチンや治療薬の開発を実現させる、という考え方だ。

 英国で昨年6月にあった主要…

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