「カードで借金」「母の介護費が」 国の貸し付け、借り切っても苦境

有料記事

編集委員・清川卓史
[PR]

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮した人に生活費を無利子で貸し付ける。国の「特例貸し付け」が始まって2年が過ぎた。利用は累計約1兆3600億円を超えている。コロナ禍の長期化で、上限額まで借りても苦境から抜け出せない人が数多くいる。

 「クレジットカードで借金して生活している」「母の介護費用が払えない」「アパートを退去しないといけない」「食料支援してほしい」「返済が頭から離れない」――。

 東京都文京区。特例貸し付けの申請・相談窓口となる同区社会福祉協議会には、貸し付けを限度額まで使い切った利用者からの痛切な声が連日のように届いている。

 同社協では、借り入れが限度額に達した人(総合支援資金の「再貸し付け」まで利用)に対し、生活状況を聞き取る独自アンケートを実施している。冒頭の声はその自由記述の一部だ。

「生活の土台にダメージ」

 同社協によれば、「再貸し付け」が終わった人、つまりこれ以上借り入れはできない人のうち、収入・貯蓄が不十分またはほとんどないという人が約3分の2を占めた。「ほかに支援は」という相談が相次いでいる。子どもの授業料や進学費の支払いが難しくなっているという声も目立つという。

 同社協地域福祉推進係長・浦田愛さんは「一時的減収ではなく生活の土台にダメージを受けている。心や体を病んでしまった人もいる。フードパントリー(食料支援)につなぐ事例もあるが、生活保護の利用は強く拒絶される人が少なくない。支援の手立てが限られている」と顔を曇らせる。 特例貸し付けの返済は2022年末まで据え置かれ、23年から順次始まる予定だ。本人と世帯主が住民税非課税であれば、返済が免除される。

 ただ非課税の線引きはかなり厳しい。東京23区の単身世帯なら給与収入が年100万円を超えれば課税される。課税ラインをわずかに上回るボーダー層では、生活が不安定なまま返済を迫られる人が出る恐れがある。

 東京都庁前で困窮者のための食料提供・生活相談を続ける自立生活サポートセンター・もやいの大西連理事長は「特例貸し付けの返済が不安で、少しでも食費を節約しようと食料支援の列に並んでいる人が実際にいる。返済の負担は重く、生活再建の妨げになってしまう」と話す。

「悲劇が起きかねない」

 東京都内社協の担当者も「返済免除にならず返済もできない滞納者が増えるのでは」と懸念する。「もとからカードローンなどの債務を抱え、特例貸し付けのお金を返済にあてていた人もいる。多重債務や自死などの悲劇が起きかねない」

 自己破産という選択を余儀な…

この記事は有料記事です。残り1232文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら