自然と人間の関係を問う 放浪民「サンカ」描いた映画公開へ

中村瞬
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 群馬県中之条町の映画祭で原案がシナリオ大賞を受賞し、同町で全編を撮影した映画「山歌」が27、28の両日、高崎映画祭で上映される。人間と自然の関係を問いかける内容で、4月には東京で公開予定。笹谷遼平監督(36)は「コロナ禍の今、人間のあり方や自然について考えるきっかけにしてもらえればありがたい」と話している。

 「山歌」は、高度経済成長期の日本が舞台。受験勉強のため東京から祖母宅がある田舎に来た中学生が「サンカ」の家族と出会い、生きることを考える物語だ。サンカとは江戸時代から昭和中期にかけ国内各地にいた放浪民で、高度経済成長期に姿を消した。

 作品の原案は、2018年に中之条町の「伊参スタジオ映画祭」でシナリオ大賞を受賞。映画は19年にいったん完成したが、笹谷監督が再編集し、昨年改めて完成させた。渋川市出身の俳優渋川清彦さんがサンカの男を演じる。

 高崎映画祭では「邦画セレクション」の6作品の一つとして上映される。4月22日から東京の「テアトル新宿」と「アップリンク吉祥寺」で公開されるほか、大阪と京都でも5月に公開を予定。今月20日の「大阪アジアン映画祭」では「JAPAN CUTS Award」を受賞し、年内にニューヨークでも公開される見通しだ。

 新型コロナウイルス感染拡大が始まった頃、「ゼロコロナ」のスローガンが叫ばれていた。笹谷監督は「自然はコントロールするものだという人間の根本姿勢が見え隠れしていた」と指摘する。その後「ウィズコロナ」にシフトしていったことについて「自然には人間が完全制圧できない事象があるということを、多くの人が実感したのではないか」と話す。「サンカを通して、自然や人間の業について考えなければいけないように思う」

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 朝日新聞社のクラウドファンディングサイト「A―port」では、「山歌」の全国公開に向けた費用を募っている(https://a-port.asahi.com/projects/sanka2022/別ウインドウで開きます)。締め切りは5月9日。支援は3千円から。問い合わせは03・6869・9001(平日午前10時~午後5時)。(中村瞬)

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