「中学生まで全国大会はいらない」為末大さん ヒントは駅のホームに

有料記事勝利至上主義を考える

聞き手・照屋健
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勝利至上主義を考える

 行き過ぎた勝利至上主義が散見される――。そんな理由で、小学生の柔道の全国大会が廃止になった。「素晴らしい決断」とSNSに投稿したのが、オリンピアンの為末大さん(43)だ。

 為末さんは「中学生までは全国大会はいらないのでは」と提言する。なぜなのか。中学で日本一となった自身の経験をふまえて、語ってもらった。

 ――全日本柔道連盟が小学生の全国大会を廃止にしました。

 「日本は若年層レベルの全国大会が多くて、かつ、とても過熱しています。良い面もありますが、結果的に伸び悩むケースをたくさん見てきました」

 「陸上でいえば、中学チャンピオンが五輪に出るのはきわめてまれ。私は中学3年で日本一になりましたが、同年代の中学チャンピオンは次々とトップレベルから脱落していきました。早い段階で勝つことが必ずしも正しいとは限らないのです」

 ――小中学生で結果を残そうとすることで、どんな弊害が生まれるのでしょうか。

 「例えば、野球のリトルリーグでは相手の守備はそこまでうまくありません。地面もでこぼこしている。活躍しようと思えば、ボールを地面にたたきつけると、ヒットの確率が高くなります。でも、そういう打ち方を覚えると、守備が整備された高校野球では伸び悩みます」

 「陸上でもそう。子どもは頭が大きく、胴体が細い。形だけ大人と似たような走り方を作っても、筋力がついたときに伸び止まりの原因になります。軽自動車の運転感覚のまま、いきなりセダンを扱うと、いろいろと不具合を起こすのと同じです」

 「小中高校と各段階で、その時期に効果的な勝利の戦略はあります。ただ、それが大人になると邪魔になったり、体に身についてしまったりして伸びない。ゆえに、小学生の段階で勝負にこだわりすぎるのは危険です」

指導者が使ってはいけない言葉

 ――大人になって成績が伸びないのは、指導法にも問題があるのでしょうか。

 「五輪に行くような選手は背…

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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2022年3月27日19時15分 投稿
    【視点】

    ちょうど今、競泳の全国ジュニアオリンピック(JO)カップが行われています。今回、日本水泳連盟の事業の一環で、トップスイマーからジュニアスイマーへの応援メッセージを集めたのですが、大橋悠依選手、本多灯選手、松本克央選手、萩野公介さんなどスーパ

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2022年3月24日13時12分 投稿
    【視点】

     小中学時代に小手先の勝ち方を知っても、その先は伸びない。長い目でみた競技力向上の面からも、明確に全国大会の弊害を指摘しています。  「目先の勝ちを拾おうとする誘惑は常にあるんです」という為末さんの言葉に、子どものスポーツ指導の現場で、長

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