洋上風力発電で三菱商事が全勝 「価格破壊」に広がる波紋

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長崎潤一郎 新田哲史 友田雄大
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 再生可能エネルギーの導入拡大の切り札とされる洋上風力発電をめぐり、エネルギー業界に波紋が広がっている。昨年12月に国が発表した3海域の公募結果で、三菱商事を中心とする事業体がライバル陣営を寄せ付けない低価格で全勝したからだ。想定外の「価格破壊」を受け、国は審査基準を見直す検討を始めた。

 平地が少ない日本では太陽光発電の適地は限られるため、再エネを主力電源にするには洋上風力の拡大がカギを握る。政府は2040年までに原発45基分にあたる最大4500万キロワットを整備する計画だ。19年に施行された再エネ海域利用法に基づき、30年にわたり海域を使える事業者を公募で選んでいる。

 今回の公募は、秋田県沖の2海域(能代市三種町男鹿市沖と由利本荘市沖)と千葉県銚子市沖の計3海域で、発電規模は約170万キロワットにのぼる。初めての案件として昨年6月に戸田建設などの事業体が選ばれた長崎県五島市沖(1・68万キロワット)の100倍の規模で、事実上の第1ラウンドとして注目されていた。

 これを三菱商事を中心とする事業体が「総取り」した。決め手となったのが圧倒的な価格の安さだった。

 三菱商事の売電価格は1キロワット時あたり11・99~16・49円。政府が設定した上限価格29円を大きく下回り、欧州では一般的な「10円未満」に迫る水準だ。

 3海域の公募には、洋上風力の世界最大手オーステッド(デンマーク)と組んで本命視されていた東京電力を含め、大手電力や再エネ事業者などの9陣営も参加したが、多くが20円台を提示した。敗れた陣営からは「信じられない価格。利益を出せるのか」「リスクを甘く見積もっていないか」などの声が上がる。

 国内での実績がほとんどない洋上風力で、なぜ他社を寄せ付けない価格を示せたのか。三菱商事エナジーソリューションズの岩崎芳博社長は「設計や建設だけでなく運用・保守までの全工程で1700超のリスク項目を洗い出し、コストを適正化した」と説明する。

 役に立ったのは欧州で蓄えた…

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