中国の学者有志が戦争反対の声明発表→まもなく削除され閲覧不能に

有料記事ウクライナ情勢

北京=冨名腰隆
[PR]

 ロシア軍によるウクライナへの侵攻を巡り、中国の複数の歴史学者が26日午後、ロシア政府とプーチン大統領に対し戦争の停止を呼びかける声明を、中国のSNSで発表した。中国政府はロシアの軍事行動を侵攻とは認定しておらず、北大西洋条約機構(NATO)の拡張に反対するロシアの立場にも支持を表明している。政府の姿勢とは一致しない学者らの提言は、まもなく削除され、閲覧不能になった。

 「ロシアのウクライナ侵攻と私たちの態度」と題した声明を発表したのは、南京大学の孫江教授ら歴史学者5人。「さまざまな意見がある中で、私たちも声を発する必要を感じた」としたうえで、「ロシアがウクライナに対して起こした戦争に強く反対する。ロシアにいくら理由があっても、武力による主権国家への侵攻は既存の国際安全保障システムを破壊するものだ」と批判した。

 さらに、孫氏らは「ウクライナ国民の国を守る行動を断固支持する」とし、ロシア政府とプーチン大統領に対し「戦争を停止し、交渉で紛争を解決するよう強く呼びかける」と求めた。

 王毅(ワンイー)国務委員兼外相は26日、中国外務省のウェブサイトでウクライナ問題に対する中国の基本的な立場を発表。「現在の情勢は見たくないものだ」として対話による解決を促す一方、「NATOが東へ拡大している状況下で、ロシアの安全保障面での正当な訴えは当然重視され、適切に解決されるべきだ」と、ロシア寄りの姿勢もにじませた。中国政府は、ロシアの行動が侵略にあたるかどうかについても、「我々は結論を急がない」(華春瑩外務省外務次官補)と言及を避けている。

 声明は、中国政府の姿勢については論評していないが、「インターネットサービスの管理規定に違反している疑いがある」との理由で間もなく削除された。

 孫氏は朝日新聞の取材に対し…

この記事は有料記事です。残り1186文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    倉田明子
    (東京外国語大学総合国際学研究院准教授)
    2022年2月27日13時56分 投稿
    【視点】

    中国政府がロシア寄りの立場を見せるなか、香港での報道などを見る限り、中国国内の世論もロシアを支持する声が大きかったようです。インターネットを含む言論規制が厳しさを増すなか、敢えて明確にロシアによる戦争を批判する声明を出した学者たちの勇気に敬

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    峯村健司
    (元・朝日新聞編集委員)
    2022年2月27日13時42分 投稿
    【提案】

    NATOの拡大には反対するが、武力行使を支持しない・・・なんとも煮え切らない中国政府の対応に対して、5人の中国の歴史学者が声を上げました。「内政不干渉の原則」は中国外交の核心原則なはず。今回のロシアによるウクライナ侵攻は声明が指摘するように

    …続きを読む
ウクライナ情勢 最新ニュース

ウクライナ情勢 最新ニュース

ロシアのウクライナ侵攻に関する最新のニュース、国際社会の動向、経済への影響などを、わかりやすくお伝えします。[もっと見る]