箱根駅伝「全国化」で古里創生 高知で初合宿、青学大・原監督に聞く

聞き手・清野貴幸
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 正月の箱根駅伝で6度目の総合優勝に輝き、高知市内で初めて合宿をした青山学院大の陸上競技部(長距離ブロック)の原晋(すすむ)監督(54)が2月21日までの合宿期間中、朝日新聞などのインタビューに応じ、四国の駅伝強化や選手の能力を発揮させる指導方法について語った。

 ――高知合宿の狙いは

 2月の合宿は例年、走り込みなんです。精神的に追い込むことなく、走る原点を見つめ直すのが目的。学生の多くは高知が初めてなんですが、暖かい高知の街並みを新鮮味がある中で走っています。

 ――2月20日開催予定で、選手がエントリーしていた「高知龍馬マラソン」が新型コロナウイルスの影響で中止になった

 本格的なレースではなく、マラソンの距離(42・195キロ)をトレーニングの一環で走る予定だった。タイムは2時間30分前後の想定で、チーム全員が走り切れる体力を証明し、そこからスピードを磨く段取り。来年またチャレンジしたい。

 ――四国の駅伝のレベルをどうみるか

 残念ながら低位にあるのが現実だと思う。競技人口が少ないのが大きな問題だと思うが、地方が疲弊してきているので、古里創生をもっと国全体で考えないといけない。

 箱根駅伝の全国化ですよ。高知で生まれた子が高知の大学で箱根駅伝を目指して高知に残るという構図ができていけば、箱根駅伝を通じた『古里創生』につながると思います。もっと大きい視点でスポーツ団体は考えていかないといけない。

 ――例えば四国の高校駅伝、どう強化すればよいか

 駅伝文化を作る必要がある。野球部も陸上部も関係なく、校内駅伝や校内マラソンのような走る文化を根強く作っていく。夏に野球をやって冬はマラソンやったっていいじゃないですか。昔は一つの競技をやり抜くのが美徳だったが、二刀流、三刀流があってしかるべきだ。指導者が発想を変えていくべきだと思う。

 ――強い青山学院大を築くのに苦労した点は

 選手や保護者との間で信頼関係を築くことでしょうね。そもそも私なんか箱根駅伝を走ったこともないし、大学OBでもない。「この人に付いていって大丈夫だろうか」と、当然不安に思ったと思う。結局は喜びを感じさせ、伸ばしてやることなんです。いきなり箱根駅伝で優勝を目指そうというのは目標でなく、大げさなうそなんですよね。私の指導をきちんと守ってやれば自己記録が伸びるというところで自信にも喜びにもなり、あの監督に付いていったら自分は伸びるというふうになってくる。

 能力を引き上げるために私自身が正しいメソッド(指導方法)を持たないといけないし、欲張らないでその子の能力を見極めてやる。能力がないのに負荷を掛けて厳しい練習をすれば故障をするし、嫌になってくる。成功体験があるとうれしくなり、自分でやりだすようになるんです。選手がやりだしたら、今度は指導者が距離を置かないといけない。そうしないと自主性が生まれてこないんです。(聞き手・清野貴幸)

     ◇

 はら・すすむ 広島県出身。世羅高で全国高校駅伝大会に出場。中京大中国電力を経て、2004年に青山学院大の監督就任。15年に初の箱根駅伝総合優勝、22年に2年ぶり6度目の総合優勝を飾る。青山学院大地球社会共生学部教授。21年の高知市夏季大学で講師を務めた。

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