統計不正、問われる首相答弁 GDPへの影響は、予算委集中審議へ
国土交通省による統計不正問題をめぐり、衆院予算委員会の集中審議が31日に開かれる。これまでの国会では、政府答弁の整合性や国内総生産(GDP)への影響について論戦が交わされたが、なおも疑問は残ったままだ。岸田文雄首相の答弁にも疑義が浮上している。審議を前に論点や判明している事実を整理した。(柴田秀並、岡戸佑樹、伊藤嘉孝)
論点の一つは、2020年1月以降の統計は「修正済み」としてきた政府答弁だ。
首相は昨年末の臨時国会で、会計検査院から指摘を受けた後の20年1月から統計の「修正を行った」と強調。補正予算は「修正の必要はない」とし、国会審議を進めた。だがその後、20年1月以降も統計の二重計上が続いていたことが判明。検証委員会の報告書でも認定された。
首相答弁と食い違う事態に、24日の衆院予算委では与党・自民党の宮崎政久氏からも認識を問う声が出た。立憲民主党の大串博志氏は「誤った答弁だと認めるべきだ」と撤回を迫ったが、首相は応じなかった。こうした姿勢は集中審議でも厳しく問われそうだ。
統計がどれだけ過大になっていたかも論点だ。朝日新聞が25日、20年度の統計が約4兆円過大になっていた疑いがあると報道。立憲の階猛氏がGDPにも影響がある可能性があるとして再算定を求めた。だが首相は「その数字について直接申し上げることは控えたい」とかわし、国交省での復元作業を急がせる考えを示した。
GDPへの影響をめぐっては、山際大志郎・経済再生相が「影響は軽微だ」との答弁を繰り返している。GDPの推計には不正のあった統計も使われるが、他にも多くの統計を用いていることなどがその理由だ。
ただ、過大分についての言及を避ける一方で、GDPへの影響は軽微とする政府の姿勢には疑問の声もあがる。法政大の平田英明教授(マクロ経済学)は「過大分がわからないのなら、影響が軽微か判断する根拠もない。政府の主張はちぐはぐだ」と指摘する。GDPは予算編成に密接に関わるだけに、政府にとって大きな火種となりかねない。
不正を続けた動機も明らかにならないままだ。首相は臨時国会で隠蔽(いんぺい)を否定する趣旨の答弁をしたが、検証委の寺脇一峰委員長は報告書を公表した14日の会見で、「見る人によって、そう評価されても仕方ない」と指摘。今国会でも、首相は「報告書では、組織的な隠蔽や改ざんであるとはされていない」とはぐらかしたが、改めて首相の認識が問われる可能性もある。
不正は3段階、20年1月以降は組織ぐるみで改ざん
一連の統計不正は、「書き換…
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- 【視点】
国会論戦を前に記者たちが見どころ、勘所を解説する記事を、社内的には「観戦ガイド」と読んでいます。読者のみなさんに、日頃取材している記者たちが自身の問題意識についてポイントを整理して提示し、国会審議をご覧になる際の一助にしてもらえれば、という
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