地球外少年少女と想定外中年男(小原篤のアニマゲ丼)

有料記事小原篤のアニマゲ丼

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 「電脳コイル」で大評判を取った磯光雄監督15年ぶりの新作「地球外少年少女」を見て、私はある疑念を抱きました。作品の基本コンセプトに関わるものでした。監督にぶつけました。「劇中で子どもたちの冒険の前面に常にデバイスとアプリとハッキングが出てきて、何だか邪魔で。そんなものない方が宇宙と向き合えるのでは、と思いました」

 「それは世代です。『古い世代は近づかないで!』っていう蚊取り線香が効いたようですね。大成功だな」と磯監督。イタズラっぽい笑顔で喜ばれてしまいました。

 私の抱いた感覚に近いのは、旅行に連れてきた子どもが車窓の風景などチラ見するだけでゲーム機やスマホとにらめっこしているのにイラッとするような。そして思ったのは、昨秋のテレビアニメ「月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)」とか、大好きな映画「王立宇宙軍 オネアミスの翼」(1987年)みたいに「初めて人間を宇宙に送り込むぞ」という時代の科学技術レベルの方が宇宙と相性がいいんじゃないか、ということ。

 「地球外少年少女」のキャッチフレーズ「Wi-Fiもコンビニもある宇宙」にも何か引っかかりました。「えー……『何もない』のが宇宙なのに、Wi-Fiやコンビニまであったら宇宙である意味なくない?」。これつまり、磯監督の言葉を借りれば「蚊取り線香が効いた」わけです。げふんげふん。「この作品を見てもらい、宇宙を目指す子どもたちを増やしたい」というのが大目標ですから、言ってみればオッサン客は想定外……(というのはオーバーで、オッサン客をグイッとひきつけるサービスもちゃんとあります。最後に書きます)。

 磯さんの原作・脚本・監督によるオリジナルストーリー「地球外少年少女」は約30分×全6話。前編(1~3話)が1月28日から、後編(4~6話)が2月11日から2週間限定で劇場公開されます。同じタイミングでブルーレイ&DVD発売、ネットフリックスで全世界配信。月生まれ宇宙育ちの少年・登矢と幼なじみの心葉(このは)は日本の宇宙ステーション「あんしん」で、地球に下りるためのリハビリ中。そこに「未成年宇宙体験キャンペーン」で大洋、美衣奈、博士(ひろし)の3人が地球からやって来るが、彗星(すいせい)とステーションの衝突事故が発生し、子どもたちは通信手段のない閉鎖空間で力を合わせて寒さや気圧低下と闘い、生き延びるため宇宙遊泳にも挑戦。更に、全人類の運命を左右する大きな陰謀に直面することに――という物語。

 舞台となる2045年の未来では、手の甲がスマホみたいなタッチ式のデバイスになっていて様々なアプリが操れ、更にAI(人工知能)搭載のドローンがパートナーロボットのように付き従いシステムにアクセスしたりハッキングしたりしてくれます。先端技術を組み込んだジュブナイル冒険物語というのは、AR(拡張現実)が身近になった未来を舞台とした「電脳コイル」と同じです。

 「自分の作っているものが仮…

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